介護費用の平均はいくら?
生命保険文化センターの調査によると、介護にかかった費用(自己負担)の平均は次のようになっています。
- 介護期間の平均:約5年1ヶ月
- 月々の費用(平均):約8.3万円
- 一時費用(住宅改修・入居一時金など)の平均:約74万円
単純計算で5年間続いた場合、月8.3万円×61ヶ月+74万円=約580万円。これが一般的な介護費用の目安です。ただし、施設入所か在宅かによって費用は大きく異なります。
在宅・施設別の費用シミュレーション
在宅介護の場合(要介護2の例)
施設入所の場合
| 施設の種類 | 月額費用(目安) | 入居一時金 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 5〜15万円 | なし |
| 介護老人保健施設(老健) | 8〜15万円 | なし |
| グループホーム(認知症対応) | 12〜22万円 | 0〜100万円 |
| 介護付き有料老人ホーム | 15〜35万円 | 0〜数百万円 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 10〜25万円 | 0〜数十万円 |
在宅介護は一見費用が安く見えますが、介護者が仕事を減らしたり辞めたりした場合の機会損失(収入減)も含めると、実際のコストは大きくなります。施設と在宅の「総コスト」を冷静に比較することが大切です。
親の資産管理をどうするか
介護が始まると、親の代わりに費用の支払いや手続きを行う場面が増えます。しかし親の財産に勝手に手をつけることは法律上できません。家族間のトラブルも多い領域です。
よく使われる3つの方法
① 家族信託(民事信託)
親が元気なうちに、財産の管理・運用・処分を子どもに任せる契約を結ぶ方法です。認知症が進んだ後でも、子が介護費用の支払いや不動産の売却ができるようになります。司法書士・弁護士への相談費用(数十万円)がかかりますが、将来のトラブル予防に有効です。
② 任意後見制度
本人が判断能力のあるうちに「後見人」を指定しておく制度。認知症になった後に裁判所が後見を開始します。法的な保護が強く安心ですが、手続きに時間がかかり費用も発生します。
③ 日常的な代理(家族間の信頼ベース)
制度を使わず、家族が日常の買い物・引き落としを管理する方法。法的な根拠はないため、兄弟間で揉めるリスクがあります。通帳・印鑑の管理者と使途を書面で記録しておくことが最低限必要です。
- お金を管理している兄弟が使途を報告しない → 横領を疑われる
- 認知症が進んだ後に不動産売却を試みるが、銀行・登記で止まる
- 施設入所の費用が足りず、子どもの貯金を崩し続ける
- 親の死後、「介護した自分が多めに相続すべき」と揉める
使える公的支援・補助制度
費用を抑えるために知っておきたい制度をまとめます。
- 高額介護サービス費:月の自己負担が上限額を超えたら超過分が払い戻される(一般世帯:月44,400円が上限)
- 負担限度額認定:施設入所時の食費・居住費を所得・資産に応じて軽減
- 住宅改修費の補助:手すり設置・段差解消など最大20万円の工事費が介護保険から支給(自己負担1〜3割)
- 高額医療・高額介護合算療養費制度:医療費と介護費の合計が年間上限を超えた場合に払い戻しあり
- 生活保護:資産・収入が基準以下の場合。介護サービスも対象になる
お金が足りなくなったときの対処法
「親の貯金が底をついてきた。このままでは介護を続けられない」——そんなときも、いくつかの選択肢があります。
- 特養への入所申請を進める:月5〜15万円と費用が安く、費用が足りない方向けの「生活保護対応施設」も多い
- 生活保護の申請を検討する:資産・収入が一定以下なら施設費用が公費でまかなえる。申請は市区町村の福祉課へ
- リバースモーゲージの検討:持ち家がある場合、自宅を担保にお金を借りる仕組み。死後に自宅を売却して返済する
- 兄弟・家族での費用分担を決め直す:感情的になりやすい話題だが、弁護士や司法書士を交えて話し合うと解決しやすい
まとめ
- 介護期間の平均は約5年。月8万円程度×5年で総額500〜600万円が目安
- 在宅と施設の総コストは「機会損失」も含めて比較すること
- 親の資産管理は早めに家族信託・任意後見を検討。放置は後のトラブルのもと
- 高額介護サービス費・負担限度額認定など、申請しないと受けられない制度がある
- 費用が足りなくなったら特養入所・生活保護・リバースモーゲージを検討する
母が特養の待機中に民間の有料老人ホームに入ることになったとき、月30万円近い費用に正直「えっ」となりました。私の手取りを超える金額で、貯金を削り始めるしかなかった。もっと早くからお金の準備をしておくべきだった、親の年金や資産状況をきちんと把握しておくべきだったと今は思います。負担限度額認定という制度も入所してから知りました。情報収集の大切さを身をもって学びました。
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「高額介護サービス費の支給」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 法務省「成年後見制度(任意後見)について」→ https://www.moj.go.jp/
- ※ 介護費用の平均値(介護期間5年1ヶ月・月額約8.3万円)は生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」(2021年)より