要介護5とはどんな状態か
要介護5は介護保険認定における最も重い区分です。日常生活のほぼすべての場面で全介助が必要な状態を指します。
| 項目 | 要介護5の状態の目安 |
|---|---|
| 食事 | 口から食べることが難しい・経管栄養が必要なことも |
| 排泄 | 尿意・便意の訴えができない・オムツが常時必要 |
| 入浴 | 全身浴は全介助・訪問入浴が必要 |
| 移動 | 寝たきり、または車いす全介助 |
| コミュニケーション | 言語でのやり取りが困難なことが多い |
| 認知機能 | 重度の認知症または意識障害を伴うことが多い |
| 医療処置 | 吸引・胃ろう・気管切開など医療的ケアが必要なことも |
在宅介護は可能か
要介護5でも在宅介護は可能ですが、介護サービスを最大限に活用し、家族の体制が整っていることが前提となります。実際に要介護5の方の一部は在宅で生活しており、「本人が家にいたい」「家族が看取りたい」という強い意志と適切なサービスの組み合わせで実現しているケースがあります。
父が要介護5になった当初は「家で看る」と決意していました。訪問介護が1日3回、週2回の訪問看護、月に1〜2回の訪問入浴……でも夜中の吸引と体位変換は私がやるしかなくて、2年間ほとんど眠れない日が続きました。「限界のサイン」を自分では気づけなかったんです。娘に「お母さん最近死にたいって言ってる」と言われて、初めて限界だと気づきました。施設に移してもらってから、父との面会の時間が穏やかになりました。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
要介護5で使えるサービス
要介護5の支給限度額は月36,217単位(1割負担で約36,217円)と最も高く設定されています。
- 訪問介護(身体介護):1日複数回・早朝・夜間訪問も可能。食事・排泄・体位変換などの全介助
- 訪問看護:医師の指示のもと看護師が訪問。吸引・胃ろう管理・褥瘡処置など医療的ケア
- 訪問入浴介護:寝たきりでも専用浴槽を持参して自宅で入浴介助。週1〜2回が一般的
- 訪問診療:医師が定期的に自宅を訪問。急変時の往診も対応
- ショートステイ:月数日〜10日程度、施設に泊まって介護者が休息できる
- 福祉用具レンタル:介護ベッド・エアマット(体圧分散)・車いす・移乗補助器具・吸引器など
- 住宅改修:手すり・スロープ設置(介護保険で上限20万円まで補助)
在宅介護の限界サイン
以下のサインが出てきたら、施設移行を本格的に検討する時期かもしれません。
- 介護者(家族)が睡眠不足・体重減少・慢性疲労が続いている
- 介護者に持病が悪化している・医療機関への受診が後回しになっている
- 褥瘡(床ずれ)が悪化している・皮膚のトラブルが増えている
- 誤嚥性肺炎を繰り返している
- 介護者が「もう無理」「死にたい」という言葉を口にするようになった
- 緊急搬送が頻繁に起きている
- 夜間の呼び出し・対応で睡眠が取れない状態が続いている
夫のALSが進行して要介護5になりました。人工呼吸器が必要になって、24時間誰かがそばにいなければならない状態。訪問看護・訪問介護を入れても夜間は私一人で対応していました。ある夜、吸引をしながら「このまま一緒に死んでしまいたい」と思った瞬間、これは限界だと気づきました。介護医療院に相談して受け入れてもらえることになって……夫に「悪かった」と謝ったら、夫は涙を流しながら「ありがとう」と言ってくれました。あの言葉は一生忘れません。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
施設移行を検討するタイミング
- 特別養護老人ホーム(特養):要介護3以上(特に4〜5)が優先。入居待機があるため早めに申し込む。複数施設への同時申し込みが可能
- 老人保健施設(老健):医療的ケアが必要な回復期・在宅復帰を目指す場合に適切。原則3〜6ヶ月の滞在
- 介護医療院:長期の医療的ケアが必要(吸引・経管栄養・気管切開等)な方向け。医療と介護を一体で提供
- 有料老人ホーム(介護付き):入居一時金が必要だが、特養より入居待機が少ないことが多い
- 施設に入ることで、本人がより専門的なケアを受けられる可能性がある
- 「家族が面会に来る時間」が本人との質の高い時間になる
- 介護者の心身が回復することで、長期的に本人を支えられる
- 「施設に入れたら見捨てた」という罪悪感を多くの家族が感じるが、それは正しくない
母が「家で死にたい」と言っていたので、最後まで在宅で看取ることにしました。訪問診療の先生・訪問看護師さん・ケアマネさんと「看取り計画書」を作って、何かあっても救急車を呼ばないと全員で確認しました。最期の2週間は私がほぼつきっきりでしたが、看護師さんが毎日来てくれて支えてもらいました。母は自分の部屋で、私の手を握りながら逝きました。在宅看取りは大変でしたが、後悔はありません。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
よくある質問
まとめ
重度介護(要介護5)の在宅継続のポイント
- 要介護5でも在宅介護は可能だが、介護保険サービスの最大活用と複数の家族体制が前提
- 訪問介護・訪問看護・訪問入浴・訪問診療・ショートステイを組み合わせて体制を作る
- 褥瘡対策(体圧分散マットレス・エアマット)が最重要——早めにケアマネに相談する
- 介護者の「限界のサイン」(慢性疲労・うつ・「死にたい」という言葉)を見逃さない
- 施設移行の申し込みは早めに——特養は待機期間が長い地域では数年かかることも
- 在宅看取りを希望する場合は、訪問診療医・ケアマネと早期に計画を立てる
要介護5の介護は、介護者の心身がギリギリになりやすい状況です。「限界になる前に相談する」ことが、本人にとっても介護者にとっても最善の結果につながります。ケアマネジャーに「正直に今の状態」を話すことが第一歩です。
- 厚生労働省「介護保険の支給限度額一覧」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業」→ https://www.mhlw.go.jp/