老老介護とは何か

老老介護とは、65歳以上の高齢者が、同じく65歳以上の高齢者を介護している状態を指します。多くは夫が妻を、または妻が夫を介護するケースです。

日本では超高齢社会が進むにつれて、この老老介護が急速に増えています。「子どもに迷惑をかけたくない」「二人でなんとかやっていける」という思いから、外部のサービスを使わずに二人きりで抱え込んでしまうケースが特に多い。

しかしその先に待っているのは、介護する側も倒れてしまう「共倒れ」のリスクです。

約6割
在宅介護のうち
老老介護の割合
約3割
認認介護(双方が
認知症)の割合
約2人に1人
老老介護の介護者が
自身も持病を抱える

老老介護の現実と危険性

老老介護が他の介護と違う点は、介護する側自身がすでに高齢であり、体力・気力・健康に余裕がないという点です。若い世代が親を介護するケースとは違い、自分自身の体の衰えと闘いながら、同時にパートナーの介護もこなさなければならない。それが老老介護の本質的な過酷さです。

認認介護——双方が認知症になると

老老介護が長期化すると、介護する側も認知症を発症し、双方が認知症状態になる「認認介護」に陥るケースがあります。在宅介護世帯の約3割を占めるとされており、非常に深刻です。

⚠️ 認認介護になると、服薬管理・火の消し忘れ・詐欺被害・栄養管理などが誰も管理できなくなります。近隣や子どもが気づいたときには、すでに二人とも危険な状態になっていることがあります。

認認介護になる前にやっておくべきこと

介護する側の健康を守る

老老介護において、最優先に守るべきは介護する側の健康です。介護する側が倒れれば、介護される側を守ることもできません。

自分の受診・服薬を絶対に後回しにしない

定期的な通院・服薬管理は、たとえ忙しくても続けてください。かかりつけ医に「配偶者を介護しているため受診が難しい」と伝えると、訪問診療の相談や通院しやすい工夫を一緒に考えてもらえることがあります。

腰・膝への負担を減らす工夫

体への負担を減らす具体的な方法
  • 福祉用具(介護ベッド・スライディングボード・リフト等)をレンタルする(介護保険で一部負担)
  • 訪問介護(ヘルパー)に入浴・移乗を担ってもらう
  • デイサービスで入浴を済ませてもらう
  • 自分が腰痛・膝痛のある場合はケアマネジャーに伝え、無理のない方法を相談する

週に1〜2日は「介護ゼロ」の時間を作る

夜間の介護が続くと、睡眠不足が蓄積して判断力・体力が急速に低下します。ショートステイを月に4〜7日程度定期利用することで、介護者がまとまって休める時間を確保できます。「配偶者を預けることへの罪悪感」を持つ方が多いですが、休息なしの介護継続はどちらのためにもなりません

使えるサービスを知る

「知らなかったから使っていなかった」というケースが非常に多いです。以下のサービスを組み合わせることで、一人に集中する負担を分散できます。

デイサービス(通所介護)

日中、施設に通って食事・入浴・リハビリ等を受けるサービス。本人が社会的な刺激を受けられるだけでなく、介護者が日中の時間を休息や自分の通院・用事に使えます。週1〜5回で利用でき、送迎も施設が行います。

訪問介護(ホームヘルプ)

ヘルパーが自宅に来て、身体介助(入浴・排泄・移乗等)や生活援助(掃除・調理・洗濯等)を行います。「他人を家に入れたくない」という方も、慣れると心強い存在になります。まず週1〜2回から試してみることをおすすめします。

ショートステイ(短期入所)

数日〜数週間、施設に泊まってケアを受けるサービス。介護者が体を休める・通院する・遠出するといった目的で定期的に活用できます。月に4〜7日程度の定期利用で、介護者の疲労蓄積を大きく防げます。

夜間対応型訪問介護

夜間にヘルパーが訪問して排泄介助等を行うサービス。夜中に何度も起こされる状況の方に有効です。地域によってサービス提供事業者が異なるため、ケアマネジャーに確認してください。

緊急通報システム・自治体の見守りサービス

自治体によっては、高齢者世帯向けに緊急通報装置を貸し出しているところがあります。介護者が急に倒れたときに通報できるため、二人暮らし世帯には特に有効です。市区町村の高齢者支援窓口に問い合わせてみてください。

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費用の現実と経済的な備え

老老介護の大きな不安の一つが費用です。年金収入の範囲内でやり繰りしながら、介護費用を出し続けることへのプレッシャーは相当なものです。

サービス月の費用目安(1割負担)
デイサービス週3回約1.5〜2万円(食費含む)
訪問介護週3〜4回約5,000〜1.5万円
ショートステイ月7日約2〜4万円(食費・居住費含む)
上記組み合わせの目安合計月4〜8万円程度
費用の負担を軽減できる制度
  • 高額介護サービス費:月の自己負担に上限が設けられる(低所得世帯は上限が低い)
  • 介護保険負担限度額認定:低所得世帯はショートステイ等の食費・居住費が軽減
  • 社会福祉協議会の日常生活自立支援事業:認知症等で判断能力が低下した方の金銭管理支援(無料〜低額)

子どもや家族への相談の仕方

子どもや兄弟に状況を伝えることをためらっている方へ。相談しないまま限界まで我慢することは、子どもにとっても「どうして言ってくれなかったの」という後悔につながります。

「助けてほしい」と言いにくいときは「事実」を伝える

感情的な言葉でなくても、事実を伝えるだけで子ども側が動きやすくなります。

💬 子どもへの相談スクリプト例
「最近、夜中に何回も起こされて眠れない日が続いているんだ」
「膝が痛くて、入浴の介助がしんどくなってきた」
「来月、自分の通院があるんだけど、付き添いをお願いできる?」
「一度ケアマネさんを交えて、みんなで今後のことを話したい」

ケアマネジャーを交えて話し合う

感情が絡むと家族間で話し合いが難しくなることがあります。ケアマネジャーに「家族全員で一度話し合いの場を作りたい」と相談すれば、担当者が同席して調整してくれることがあります。

限界を感じたときのサイン

以下の状態が続いているなら、今すぐ専門家に相談することをおすすめします。

🚨 「消えてしまいたい」「楽になりたい」という気持ちが出てきたら、それは深刻なサインです。一人で抱えず、まず地域包括支援センター(各市区町村)または「よりそいホットライン(0120-279-338・24時間)」に電話してください。

限界のサインが出ていても「まだ大丈夫」「もう少しだけ」と自分に言い聞かせてしまう方が多いです。しかし介護者が倒れた後の方が、被介護者にとっても状況は深刻になります。自分を守ることが、パートナーを守ることにつながります。

体験談

👴
佐藤和夫さん(仮名)・78歳・元会社員 妻(76歳・要介護2)を在宅介護中

妻が要介護になったのが3年前。最初は「俺がやる」って意地になっていたんです。子どもたちには心配かけたくなかった。でも気づいたら、自分の血圧が上がって、膝も痛くて。ある日台所で目眩がして、床に座り込んでしまいました。妻の呼ぶ声は聞こえているのに、立ち上がれない。あのとき初めて「これは一人ではいけないな」と思いました。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

👩
田村光子さん(仮名)・74歳・主婦 夫(77歳・要介護3)を介護中・自身も腰椎狭窄症

私も腰が悪いのに、夫の移乗介助を毎日やっていました。ある日ケアマネさんに「奥さん、歩き方が前と全然違う」って指摘されて。自分では気づいていなかったんです。スライディングボードをレンタルしてもらって、週2回ヘルパーさんに入浴介助をお願いしたら、私の腰痛がぐっと楽になりました。夫の介護を続けるためにも、自分の体が先だと気づきました。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

👨
木村太一さん(仮名)・51歳・会社員(息子) 老老介護の両親を遠くから見ていた経験

父が母の介護をしていたんですが、「大丈夫だ」しか言わなくて。ある年のお正月に帰ったら、父がひどく痩せていて。冷蔵庫もほとんど空で。「なんで言ってくれなかったの」って聞いたら「お前たちに迷惑かけたくなかった」って。あの後すぐにケアマネさんに入ってもらって、ショートステイを月に6日組みました。もっと早くから声を聞きに来ればよかったと今でも思います。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

まとめ:老老介護で自分を守るために

  1. 自分の受診・服薬を後回しにしない——介護者の健康が最優先
  2. 腰・膝への負担を福祉用具・ヘルパーで軽減する
  3. ショートステイを月4〜7日定期利用して「介護ゼロの日」を作る
  4. デイサービス・訪問介護を積極的に活用して一人に集中させない
  5. 認認介護になる前に、子ども・ケアマネジャーと情報共有しておく
  6. 子どもには「事実」を伝えるだけでいい。具体的なお願いを言葉にする
  7. 限界のサインを見逃さず、早めに助けを求める
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参考・出典
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のアドバイスではありません。具体的な支援については、地域包括支援センターやケアマネジャーにご相談ください。