空き家になった実家に起こるリスク

親が老人ホームや特別養護老人ホームに入居した後、実家を「とりあえずそのままにしておこう」と考える方は多いです。しかし、誰も住まなくなった家は思いのほか早く傷みます。人が住んでいる家と誰も使っていない家では、建物の劣化スピードが大きく違います。

放置した実家に起こりやすいトラブル
  • 建物の急速な劣化:換気されないことで湿気がこもり、カビ・腐食・シロアリの被害が広がる
  • 不審者・不法侵入のリスク:空き家は犯罪に利用される・狙われるリスクが高い
  • 庭木・雑草の越境:近隣トラブルや行政指導の対象になる可能性がある
  • 固定資産税の増加:「特定空き家」指定を受けると住宅用地特例が外れ、税負担が最大6倍になる
  • 将来の売却価格の下落:空き家期間が長いほど買い手がつきにくく、価格が下がる

「親が亡くなってから考えよう」と先送りにしている間に、実家の資産価値はどんどん下がります。施設入居が決まった段階で、実家の方針を家族で話し合っておくことが重要です。

⚠️ 注意:親が認知症の場合、意思確認が難しくなる前に「実家をどうするか」の意向を確認しておきましょう。判断能力がなくなってからでは、成年後見人の選任が必要になり、売却等の手続きが大幅に複雑になります。

実家の扱い方5つの選択肢

実家の扱い方には大きく5つの選択肢があります。家族の状況・親の意向・資産状況によって最適解は変わりますが、それぞれの特徴を知っておくことが大切です。

1
売却する
最もシンプルな解決策。売却代金を介護費用に充てられるため、施設費用の支払いに余裕が生まれます。維持管理の手間・固定資産税・修繕費も不要になります。親が存命中の売却は「居住用財産3,000万円特別控除」の適用条件の確認が必要です。
現金化できる 維持コストゼロ 思い出の家を手放す 認知症だと手続き複雑
2
賃貸に出す
実家を貸し出して家賃収入を得る方法です。介護費用の一部を賄えます。ただし、入居者退去後の原状回復費・設備故障対応・空室リスクも伴います。建物の状態が良くないと入居者が集まらない場合もあります。管理は不動産会社に委託するのが一般的です。
家賃収入が得られる 所有権を手放さない 修繕・管理コストが発生 売却しにくくなる場合がある
3
家族・子どもが住む・使う
子どもや孫が実家に住む、または週末に利用するケースです。建物の維持管理がしやすく、「住宅用地特例」も継続されます。ただし通勤・通学の都合や家族の意向が一致しないと現実的ではありません。リフォーム費用がかかる場合もあります。
税制特例が継続 資産価値を保てる 居住可能な距離・条件が必要 リフォーム費用
4
空き家バンク・自治体活用
自治体が運営する「空き家バンク」に登録し、移住希望者や地域活動への活用を図る方法です。売却や賃貸よりも柔軟な条件で地域に貢献しながら物件を活かせます。補助金・改修支援を行う自治体もあります。都市部より地方の物件向けの選択肢です。
地域とつながれる 補助金活用の可能性 都市部では利用者が少ない 収益化は限定的
5
解体して更地にする
老朽化が進んでいて活用が難しい場合、解体して更地にする選択肢があります。解体費用は木造一戸建てで100〜200万円程度が目安。更地にすると売却しやすくなることがある一方、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税負担が増加します(逆効果になる場合も)。解体前に税理士や不動産会社に相談を。
将来の売却がしやすい場合も 維持管理の手間が減る 解体費用100〜200万円 固定資産税が増加する

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「特定空き家」指定と固定資産税の落とし穴

2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」により、管理が不十分な空き家は行政から「特定空き家」「管理不全空き家」に指定される可能性があります。

指定されると、住宅用地の固定資産税特例(敷地面積200㎡以下の部分で1/6に軽減)が解除されます。例えば年間12万円だった固定資産税が、最大で72万円になるケースもあります。

状態 固定資産税(200㎡以下の部分) リスク
通常の住宅(居住中) 固定資産税評価額 × 1.4% × 1/6 なし
空き家(特例適用中) 固定資産税評価額 × 1.4% × 1/6(継続) 管理状態の悪化で指定リスク
特定空き家・管理不全空き家 固定資産税評価額 × 1.4%(特例外れ・最大6倍 行政指導→勧告→命令→代執行
💡 空き家のまま維持するなら最低限やること
  • 月1回以上の換気と清掃(カビ・湿気対策)
  • 庭の草刈り・樹木の剪定(近隣への越境防止)
  • 水道・ガスの停止手続き(不要になった場合)
  • ポストの郵便物整理(不審者に「空き家」と悟られない)
  • 市区町村への「管理中」の届け出(自治体によって異なる)

売却・相続時の税金の基本

実家の売却や相続には税金が絡みます。全体像を把握しておくことで、損をしない判断がしやすくなります。

① 居住用財産の3,000万円特別控除

親が住んでいた実家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。ただし、親が施設に入居してから3年を経過した年の12月31日までに売却しないと、この特例が使えなくなります。施設に入って「そのうち売ろう」と先送りにしていると、この期限を過ぎてしまうことがあるので注意が必要です。

② 相続後に売却する「空き家特例」

相続によって取得した空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例(空き家特例)」があります。2027年12月31日まで適用期限が延長されています。

税制特例の適用を受けるための主な要件(概要)
  • 昭和56年5月31日以前に建築された建物(旧耐震基準)であること(一部例外あり)
  • 相続の開始直前まで被相続人(親)が一人で住んでいたこと
  • 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
  • 売却価格が1億円以下であること
  • 売却前に一定の耐震改修または解体を行うこと(新規則では解体なしでも可のケースあり)
⚠️ 税制は改正が頻繁にあり、個別の要件は複雑です。実際に売却・相続を検討する際は、必ず税理士・不動産会社に相談してください。本記事は一般的な情報提供を目的としており、税務上の判断を保証するものではありません。

経験者の声

👩
Yさん・55歳・女性 母が特養に入居後、実家(埼玉・築40年)をどうするか悩んだ

母が施設に入ってから「とりあえず2年」置いておいたんですが、その間に雨漏りが悪化してシロアリが出て、修繕見積もりが300万円以上になってしまいました。もっと早く動けばよかったと後悔しています。結局、解体して更地で売却しましたが、早めに動けばもっと高く売れたと聞いて……。専門家への相談は後回しにしないほうがいいです。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

👨
Hさん・61歳・男性 父が有料老人ホームへ。実家(神奈川・一軒家)を賃貸に転用

父の施設費用が月25万円かかるので、実家を賃貸に出して月12万円の家賃収入を得ることにしました。リフォームに100万円かかりましたが、1年で回収できて今は余裕ができています。管理は不動産会社に全部お任せしているので、手間はほとんどないです。相続のことも考えると売らずに持っておくのが正解だったかなと思っています。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

👩‍🦳
Kさん・49歳・女性 義父が認知症で施設へ。実家(岐阜)の名義問題で苦労した

義父がまだ存命で、でも認知症が進んでいて、実家の名義は義父のまま。売ろうにも本人に判断能力がないので成年後見人を申し立てることになりました。手続きに半年以上かかって、その間も固定資産税は払い続けて……。認知症になる前に「実家はどうしたいか」を確認しておくべきでした。これが一番の教訓です。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

よくある質問

親が老人ホームに入った後、実家の固定資産税はどうなりますか?
親が施設に入居しても、実家が「居住用住宅」の要件を満たしている間は住宅用地の固定資産税特例(最大1/6軽減)が継続されます。ただし誰も住んでいない状態が続き「特定空き家」に指定されると、この特例が外れ税負担が大幅に増加します。自治体によって判断基準が異なるため、早めに市区町村の窓口に確認することをお勧めします。
親が存命中に実家を売ることはできますか?
はい、可能です。ただし実家が親名義の場合は親の同意が必要で、認知症が進んでいる場合は成年後見制度の利用が必要になることがあります。また、親が存命中に売却する場合は「居住用財産の3,000万円特別控除」の適用条件が変わる場合があるため、税理士への相談を推奨します。
実家を賃貸に出すと相続税はどうなりますか?
賃貸中の不動産は「貸家建付地」として評価が下がり(最大20〜30%減)、相続税の節税効果があります。ただし入居者がいると売却が難しくなる・原状回復費用が発生するなどのリスクもあります。賃貸化を検討する場合は相続発生前に税理士と不動産会社両方に相談することをお勧めします。
誰も使わない実家をそのままにしておくとどうなりますか?
放置すると、建物の劣化が急速に進みます。また「特定空き家」や「管理不全空き家」に行政に指定されると、固定資産税の住宅用地特例(最大1/6軽減)が外れ税額が最大6倍になります。さらに行政代執行(強制解体)の対象となる可能性もあります。空き家のまま維持する場合も、定期的な換気・清掃・設備点検が必要です。

まとめ:実家問題は先送りするほど選択肢が減る

  1. 親の施設入居が決まったら、早い段階で「実家をどうするか」を家族で話し合う
  2. 認知症が進む前に親の意向を確認しておく——後からでは成年後見が必要になる
  3. 選択肢は「売却・賃貸・家族が住む・空き家バンク・解体」の5つ。状況に応じて選ぶ
  4. 放置すると固定資産税の増加・建物劣化・資産価値の下落リスクがある
  5. 売却を検討するなら「3,000万円特別控除」の期限(施設入居から3年)を意識する
  6. 複合的な問題は税理士・不動産会社・FPへの早めの相談が最善策

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参考資料
  • 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法(2023年改正)」
  • 国土交通省「令和5年住宅・土地統計調査(空き家の状況)」
  • 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
  • 総務省「固定資産税の住宅用地に対する課税標準の特例」
本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の税務・法律・不動産上の判断を保証するものではありません。固定資産税・相続税・売却に関する具体的な判断は、税理士・不動産会社・司法書士等の専門家にご相談ください。