空き家になった実家に起こるリスク
親が老人ホームや特別養護老人ホームに入居した後、実家を「とりあえずそのままにしておこう」と考える方は多いです。しかし、誰も住まなくなった家は思いのほか早く傷みます。人が住んでいる家と誰も使っていない家では、建物の劣化スピードが大きく違います。
- 建物の急速な劣化:換気されないことで湿気がこもり、カビ・腐食・シロアリの被害が広がる
- 不審者・不法侵入のリスク:空き家は犯罪に利用される・狙われるリスクが高い
- 庭木・雑草の越境:近隣トラブルや行政指導の対象になる可能性がある
- 固定資産税の増加:「特定空き家」指定を受けると住宅用地特例が外れ、税負担が最大6倍になる
- 将来の売却価格の下落:空き家期間が長いほど買い手がつきにくく、価格が下がる
「親が亡くなってから考えよう」と先送りにしている間に、実家の資産価値はどんどん下がります。施設入居が決まった段階で、実家の方針を家族で話し合っておくことが重要です。
実家の扱い方5つの選択肢
実家の扱い方には大きく5つの選択肢があります。家族の状況・親の意向・資産状況によって最適解は変わりますが、それぞれの特徴を知っておくことが大切です。
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「特定空き家」指定と固定資産税の落とし穴
2015年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(空き家法)」により、管理が不十分な空き家は行政から「特定空き家」「管理不全空き家」に指定される可能性があります。
指定されると、住宅用地の固定資産税特例(敷地面積200㎡以下の部分で1/6に軽減)が解除されます。例えば年間12万円だった固定資産税が、最大で72万円になるケースもあります。
| 状態 | 固定資産税(200㎡以下の部分) | リスク |
|---|---|---|
| 通常の住宅(居住中) | 固定資産税評価額 × 1.4% × 1/6 | なし |
| 空き家(特例適用中) | 固定資産税評価額 × 1.4% × 1/6(継続) | 管理状態の悪化で指定リスク |
| 特定空き家・管理不全空き家 | 固定資産税評価額 × 1.4%(特例外れ・最大6倍) | 行政指導→勧告→命令→代執行 |
- 月1回以上の換気と清掃(カビ・湿気対策)
- 庭の草刈り・樹木の剪定(近隣への越境防止)
- 水道・ガスの停止手続き(不要になった場合)
- ポストの郵便物整理(不審者に「空き家」と悟られない)
- 市区町村への「管理中」の届け出(自治体によって異なる)
売却・相続時の税金の基本
実家の売却や相続には税金が絡みます。全体像を把握しておくことで、損をしない判断がしやすくなります。
① 居住用財産の3,000万円特別控除
親が住んでいた実家を売却する場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。ただし、親が施設に入居してから3年を経過した年の12月31日までに売却しないと、この特例が使えなくなります。施設に入って「そのうち売ろう」と先送りにしていると、この期限を過ぎてしまうことがあるので注意が必要です。
② 相続後に売却する「空き家特例」
相続によって取得した空き家を売却する場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例(空き家特例)」があります。2027年12月31日まで適用期限が延長されています。
- 昭和56年5月31日以前に建築された建物(旧耐震基準)であること(一部例外あり)
- 相続の開始直前まで被相続人(親)が一人で住んでいたこと
- 相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却すること
- 売却価格が1億円以下であること
- 売却前に一定の耐震改修または解体を行うこと(新規則では解体なしでも可のケースあり)
経験者の声
母が施設に入ってから「とりあえず2年」置いておいたんですが、その間に雨漏りが悪化してシロアリが出て、修繕見積もりが300万円以上になってしまいました。もっと早く動けばよかったと後悔しています。結局、解体して更地で売却しましたが、早めに動けばもっと高く売れたと聞いて……。専門家への相談は後回しにしないほうがいいです。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
父の施設費用が月25万円かかるので、実家を賃貸に出して月12万円の家賃収入を得ることにしました。リフォームに100万円かかりましたが、1年で回収できて今は余裕ができています。管理は不動産会社に全部お任せしているので、手間はほとんどないです。相続のことも考えると売らずに持っておくのが正解だったかなと思っています。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
義父がまだ存命で、でも認知症が進んでいて、実家の名義は義父のまま。売ろうにも本人に判断能力がないので成年後見人を申し立てることになりました。手続きに半年以上かかって、その間も固定資産税は払い続けて……。認知症になる前に「実家はどうしたいか」を確認しておくべきでした。これが一番の教訓です。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
よくある質問
まとめ:実家問題は先送りするほど選択肢が減る
- 親の施設入居が決まったら、早い段階で「実家をどうするか」を家族で話し合う
- 認知症が進む前に親の意向を確認しておく——後からでは成年後見が必要になる
- 選択肢は「売却・賃貸・家族が住む・空き家バンク・解体」の5つ。状況に応じて選ぶ
- 放置すると固定資産税の増加・建物劣化・資産価値の下落リスクがある
- 売却を検討するなら「3,000万円特別控除」の期限(施設入居から3年)を意識する
- 複合的な問題は税理士・不動産会社・FPへの早めの相談が最善策
- 国土交通省「空家等対策の推進に関する特別措置法(2023年改正)」
- 国土交通省「令和5年住宅・土地統計調査(空き家の状況)」
- 国税庁「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
- 総務省「固定資産税の住宅用地に対する課税標準の特例」