高齢者が詐欺に狙われやすい理由

警察庁の統計によると、特殊詐欺(振り込め詐欺・特殊詐欺)の被害者の約85%が65歳以上の高齢者です。「うちの親は頭がしっかりしているから大丈夫」と思っていても、詐欺は認知症とは無関係に誰にでも起こります。

なぜ高齢者が狙われやすいのか——理由を知ることが、対策の第一歩です。

高齢者が詐欺に遭いやすい4つの理由
  • 判断力のわずかな低下:認知症でなくても、加齢で情報処理スピードが落ち「急いで判断する」状況に弱くなる
  • 孤独感・親切への弱さ:一人暮らしや日中の孤独が、親切にしてくれる相手への信頼を高める
  • 「自分は騙されない」という過信:この思い込みが警戒心を下げ、詐欺師が最も利用しやすいポイントになる
  • 固定電話を知らない番号にも出る:世代的に電話に出ることが礼儀であり、着信拒否に抵抗がある

詐欺師たちは心理の専門家です。「急かす」「権威を使う」「親切を装う」の3つの技術を駆使して、冷静な判断を奪います。一度電話口で話し始めると、断るのが難しくなる設計になっています。

今狙われている詐欺手口6種

手口の特徴と、実際に使われる「セリフのパターン」を知っておくことで、親に具体的に伝えることができます。

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① オレオレ詐欺(息子・孫を装う)
子や孫を名乗り「事故を起こした」「会社のお金を使ってしまった」などと言って現金を要求する。弁護士・会社の上司を名乗る人物が続けて登場する「多段構造」が特徴。
「ママ、俺だよ。事故を起こして示談金が必要で…」
📄
② 架空請求詐欺
「未払いの料金がある」「裁判所から通知が届く」などと脅し、コンビニ払いや電子マネーで支払わせる。ハガキ・SMS・メールで届くことが多い。
「有料サービスの未払いがあります。本日中にお支払いください」
🏦
③ 還付金詐欺
市役所・医療費・税金の「還付金がある」と電話し、ATMに誘導して操作させる。振り込む操作のつもりが、実際は詐欺口座に送金している。
「医療費の還付金があります。ATMで手続きをしてください」
📈
④ 投資・利殖詐欺
「絶対に儲かる」「元本保証」と言って投資させる。最初に少額の利益を渡して信頼させ、後から大金を引き出す手法。SNSや電話・DMで接触してくる。
「先月の運用利回りは15%でした。口座開設だけでも…」
❤️
⑤ ロマンス詐欺
SNSや出会い系で親密な関係を築き、「海外赴任中に事故にあった」「ビジネスを手伝ってほしい」などと言って送金させる。孤独な高齢者を標的にしやすい。
「もうすぐ会いに行けます。でも急ぎの費用が必要で…」
🚪
⑥ 訪問販売・点検商法
「屋根に異常がある」「水道の点検に来た」と訪問し、不要な工事や商品を高額で契約させる。強引に玄関に上がり込み、断りにくい状況を作る。
「近くで工事をしていて、お宅の屋根も心配になりまして…」
🚨 共通のサイン:「急いで」「今日中に」「他の人に言わないで」——この3つのセリフが出たら詐欺を疑ってください。本当の行政機関や銀行は絶対に急かしません。

家族が今日からできる予防策5つ

「知識として知っていても、その場になると動揺してしまう」のが詐欺の怖さです。知識の教育だけでなく、物理的に詐欺に遭いにくい環境を作ることが重要です。

  1. 固定電話を「常時留守電設定」にする 知らない番号からかかってきても直接出ずに留守電で録音し、内容を確認してから折り返す習慣をつけます。これだけで電話系詐欺の大半を防げます。「電話に出ないのは失礼」という意識を変える声かけを家族でしておきましょう。
  2. 「迷惑電話防止機能付き電話機」に交換する 電話口に自動で「この電話は詐欺防止のため録音されます」とアナウンスする機器を導入します。詐欺師はこれを聞いた時点で電話を切ることが多いです。自治体によっては購入費用の補助制度があるため、地域の窓口に確認してみましょう。
  3. 家族間の「合言葉」を決めておく 「本当に○○(息子の名前)なら合言葉を言えるはず」という確認ができるよう、家族だけが知る合言葉を事前に決めておきます。急いでいる状況でも合言葉を聞く習慣をつけることで、なりすましを即座に見破れます。
  4. 通帳・印鑑・キャッシュカードの管理を確認する 大金を一度に引き出せる状態のままにしておくと、被害が大きくなります。定期預金への分散・1日の引き出し上限額の設定・本人確認の強化など、銀行の詐欺防止サービスを活用しましょう。カードを「渡さない」だけで多くの被害を防げます。
  5. 定期的に親と連絡を取り「おかしな電話がなかったか」を確認する 週に一度の電話で「変な連絡はなかった?」と聞く習慣が、早期発見につながります。実際の詐欺被害は「家族にバレたくない」という心理から隠されることが多く、定期的な対話が唯一の早期発見の手段です。

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被害に気づいたときの対処法

親が詐欺に遭ったかもしれないと気づいたとき、パニックになるほど対応が遅れます。まず落ち着いて、次の順番で動きましょう。

すぐにすること

🚔
警察相談専用電話
詐欺被害・不審な連絡の相談窓口。24時間ではないが、警察署への被害届の前に相談できる。
#9110
🏛
消費生活センター
訪問販売・架空請求・悪質商法の相談窓口。クーリングオフや解約手続きのアドバイスをもらえる。
188(消費者ホットライン)
🏦
銀行(振り込み停止)
振り込んだ直後なら、銀行に連絡することで送金を止められる場合がある。早ければ早いほど返金の可能性が高まる。
各銀行の緊急連絡先
⚖️
法テラス(法律相談)
被害回復のための法的対応や、弁護士への相談を無料・低価格でサポートしてくれる公的機関。
0570-078374
💡 「振り込め詐欺救済法」で被害回復できることも
  • 詐欺に使われた口座を金融機関が凍結・残高を確認する制度(振り込め詐欺救済法)
  • 口座に残高がある場合は「被害回復分配金」として支払われる可能性がある
  • 被害届を出しておくことが分配金受取の前提条件になるため、早めに警察に相談を
  • 電子マネー・ギフトカードでの支払いは回収がほぼ不可能なため、特に注意

経験者の声

👩
Nさん・52歳・女性 一人暮らしの母(78歳)が還付金詐欺に遭いかけた

母から「市役所の人にATMに行くよう言われた」と電話が来て、すぐに詐欺だと気づいて止めました。母は「本当に親切そうな声だった」と言っていて、録音してあった電話を聞いたら確かに丁寧な話し方で驚きました。あの時、たまたま電話してたから気づけましたが……。それ以来、毎日電話するようにしています。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

👨
Tさん・58歳・男性 父(81歳)が投資詐欺で300万円を失った

父が「いい投資話がある」と嬉しそうに話してきたときに止めればよかった。その時は「ちゃんと考えているから大丈夫」と信じてしまって。3ヶ月後に「業者と連絡が取れなくなった」と打ち明けてきました。300万円は戻らなかった。あの頃、父が孤独で友達が欲しかったんだと今はわかります。親の孤独に気づくことも詐欺防止につながるんだと思います。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

👩‍🦳
Mさん・46歳・女性 訪問販売で屋根工事を80万円で契約させられた母(72歳)

「屋根の修理が必要」と言われて契約書にサインしていたんです。発覚したのが8日後で、クーリングオフ(8日以内)のギリギリでした。消費生活センターに相談したら「今すぐ内容証明を送りましょう」と言ってくれて、全額返金してもらえました。知識があれば助かることもある。188は覚えておいてほしいです。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

よくある質問

高齢の親が詐欺に遭いやすい理由は何ですか?
加齢により判断力・記憶力が低下すること、孤独感から親切にされると信じやすくなること、固定電話を使い続けているため知らない番号にも出てしまうこと、などが主な理由です。また「自分は騙されない」という過信が警戒心を下げる要因にもなります。認知症でなくても詐欺被害に遭うケースは多く、家族全員で意識を共有することが重要です。
親が詐欺に遭ったかもしれないと気づいたら、最初にすることは?
まず振り込みや送金がある場合は、すぐに銀行に連絡し取引の停止・確認を依頼します。次に「#9110」(警察相談専用電話)または最寄りの警察署に被害届を相談します。消費生活センター(188)でも相談を受け付けており、クーリングオフや解約手続きのアドバイスをもらえます。証拠になるものは保全しておきましょう。
固定電話での詐欺を防ぐ一番効果的な方法は?
「常時留守番電話設定」が最も効果的です。知らない番号からかかってきても直接出ずに、録音されたメッセージを聞いてから折り返す習慣をつけるだけで、オレオレ詐欺・還付金詐欺の大半を防げます。さらに「迷惑電話防止機能付き電話機」への交換・「自動録音アダプタ」の取り付けも有効です。警察や自治体が費用補助している地域もあります。
詐欺被害のお金は戻ってきますか?
残念ながら、振り込み詐欺の被害金を全額回収できるケースは少ないのが現実です。ただし「振り込め詐欺救済法」に基づき、詐欺に使われた口座に残高がある場合は被害回復分配金として一部が戻ってくることがあります。また、クーリングオフ制度が使える悪質商法の場合は全額返金を求められます。早期発見・早期相談が被害回復の鍵です。

まとめ:詐欺は「知識」より「環境」で防ぐ

  1. 特殊詐欺被害者の約85%が65歳以上——「うちの親は大丈夫」は最大のリスク
  2. 「急かす」「権威を装う」「秘密にさせる」——この3つのサインが出たら即座に電話を切る
  3. 最も効果的な予防策は「固定電話の常時留守電設定」と「迷惑電話防止機能付き電話機」
  4. 家族間の合言葉・通帳管理・週1回の連絡習慣が早期発見につながる
  5. 被害に気づいたら:銀行(振り込み停止)→ #9110(警察相談)→ 188(消費者ホットライン)の順で動く
  6. 訪問販売は8日以内のクーリングオフで全額返金を求められる場合がある

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参考資料
  • 警察庁「令和5年における特殊詐欺の認知・検挙状況について」
  • 消費者庁「令和5年版 消費者白書」
  • 金融庁「振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)」
  • 国民生活センター「高齢者の消費者トラブル相談事例」
本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の法律・税務・被害回復の判断を保証するものではありません。詐欺被害に遭われた場合は、警察・消費生活センター・法テラス等の専門機関にご相談ください。