「申し訳ない」という罪悪感の正体と手放し方
ショートステイを勧めても「でも申し訳なくて……」と言う介護家族は非常に多いです。この「罪悪感」の正体は何でしょうか。多くの場合、それは「自分が介護すべきなのに、逃げている」という思い込みから来ています。
でも、少し考え方を変えてみてください。介護者が疲れ果てて倒れれば、在宅介護は続けられません。ショートステイは「逃げる」ことではなく、長期的に介護を続けるための補給線です。
「自分が全部やらなければ家族への愛情が足りない」
「施設に預けるのは逃げることだ」
「本人が嫌がるならやめるべきだ」
「お金を使うのが申し訳ない」
「私が休むことで、介護を長く続けられる」
「本人もプロのケアと他者との交流で生活が豊かになる」
「1泊2日の体験から始めれば、本人も慣れていく」
「介護保険を使う権利として堂々と使っていい」
最初にケアマネさんから「ショートステイを使ってみては」と言われたとき、私は「母を捨てるみたいで嫌です」と断ったんです。でも介護が2年目に入って自分が体を壊してしまって。やむなく使い始めたら、最初こそ「帰りたい」と電話がありましたが、3回目からは施設のスタッフさんと仲良くなって「また行く」と言い始めた。私も月に4日、本当に自分のことだけを考えられる時間が生まれて、母への接し方が全然変わりました。もっと早く使えばよかったと思っています。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
初めてのショートステイ——失敗しない「慣らし方」
初めてのショートステイで「本人が大泣きした」「拒否が強くて使えなかった」という経験をすると、次が使いにくくなります。最初の体験を成功させることが、継続利用への鍵です。
段階的な慣らし方(推奨パターン)
- 第1回:1泊2日——「お試し」として短く体験。本人に「明日迎えに来るよ」と伝える
- 第2〜3回:2泊3日——顔見知りのスタッフが増える時期。本人の表情の変化を観察する
- 第4〜5回:3〜4泊——「いつものところ」として定着し始める。楽しみが生まれてくる時期
- 定期化:月4〜7泊——定期枠を確保して、介護者のレスパイトに安定して使えるようになる
- デイサービスと同じ施設を選ぶ:顔見知りのスタッフがいると、本人が安心しやすい。「いつものところでお泊まり」という感覚になる
- 帰宅日をカレンダーに書く:「〇日(△曜日)に必ず迎えに来る」という約束を視覚化する。認知症の方はカレンダーを壁に貼って毎日確認してもらう
- 好きなものを持たせる:枕・使い慣れたタオル・家族の写真・好きな音楽プレーヤーなど「家の匂い・記憶」を持ち込む
- 施設スタッフに日常の情報を渡す:好きな食べ物・嫌いなこと・昼寝の習慣・呼ばれたい名前など、本人が「わかってもらえている」と感じるとなじみやすい
- 介護者は帰宅後に「よかった点」を聞く:「ご飯は何を食べた?」「どんな人と話した?」など会話を引き出すことで、次回への前向きな記憶が作られる
施設選びのポイントと見学で確認すること
ショートステイの施設を選ぶとき、多くの家族が「近い」「空いている」「安い」だけで選んでしまいがちです。でも介護の質・本人の居心地は施設によって大きく異なります。初回利用前に必ず見学してください。
見学で確認すべき5つのポイント
- ✓スタッフが利用者に名前・目線で話しかけているか
「おじいちゃん、ごはんですよ」ではなく「〇〇さん、今日はハンバーグですよ」と個人として接しているかどうかは、ケアの質を見抜く最も確実なサインです。 - ✓ショートの利用者が本入所の利用者と同じ扱いを受けているか
施設によっては「ショートは短期だから後回し」という雰囲気があります。食事の座席・入浴の順番・スタッフの関わりに差がないかを確認してください。 - ✓認知症・BPSDへの対応経験が豊富か
徘徊・大声・夜間不穏への対応を「どのようにしていますか?」と直接聞いてみましょう。具体的に答えられる施設は経験があります。 - ✓食事を見せてもらえるか・実際に食べてみることができるか
食事は本人の満足度を左右する最大の要素です。メニュー表だけでなく、実物を見せてもらうか、可能なら試食体験を依頼してみましょう。 - ✓緊急時・体調急変時の対応フローを説明してもらえるか
「夜中に発熱した場合」「転倒した場合」など具体的なシナリオで説明できる施設は、マニュアルと実践が整っています。
・見学を断る・見せたがらない施設
・スタッフが利用者を呼び捨てにしている・大声で話しかけている
・「認知症の方はお断りです」と言うのに詳しい理由を説明しない
・緊急時の連絡先・対応について「ケースバイケース」としか答えない
最初に見学した施設は、スタッフが利用者を「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼んでいて、なんか嫌だなと感じました。3か所目の施設に行ったとき、スタッフが「永田さん、今日は体操がありますよ」と名前で呼んでいて、それだけで安心感が全然違った。値段も少し高かったけど、父が施設から帰ってきたとき「あそこのご飯はおいしかった」と言ったのを聞いて、あの施設にして正解だったと思いました。見学での「気になること」は全部聞いておくべきです。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
「迎えに来て」と電話が来たときの対応
初回・2回目のショートステイで、本人から「帰りたい」「迎えに来て」という電話がかかってくることはよくあります。このときどう対応するかが、ショートステイを継続できるかどうかを左右します。
してはいけない対応
- 電話のたびにすぐ迎えに行く:「泣けば帰れる」という学習が起き、次回以降の拒否がさらに強くなる
- 「もうショートステイはやめる」と感情的に決める:1〜2回の電話で判断せず、施設スタッフに様子を聞いてから判断する
- 電話口で長時間話し続ける:通話が長いと「家族が心配している」ことが伝わり、本人の不安が増す。短く「わかった、〇日に迎えに行くね」で切る
正しい対応
- 「〇日に迎えに行くよ」と帰宅日を再確認して短く切る:約束を再確認することで本人の不安が落ち着くことが多い
- 施設スタッフに「電話後の様子」を確認する:電話を切った後どう過ごしていたかを施設に聞くと、実際の状態がわかる。電話中は不安そうでも、切ったらすぐ食事していることも多い
- 電話対応を施設スタッフに任せる相談をする:「電話が来たらスタッフが気分を切り替える対応をしてもらえないか」と事前に施設に依頼しておく方法もある
2回目のショートステイで「早く帰りたい。なんで来させるの」という電話が3回かかってきて、私も精神的に参ってしまって迎えに行ってしまいました。翌日ケアマネさんから「電話が来ても帰宅日まで待ってほしい。電話を切った後の母は普通に過ごしていましたよ」と言われて……。3回目は事前に施設に「電話が来たらスタッフさんが対応してください」とお願いしたら、母は一度も電話してこなかった。電話のたびに駆けつけるのが正解じゃないんだとわかりました。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
ショートステイ中に家族がすること・しないこと
ショートステイの時間は、介護者にとっての「回復の時間」です。この時間を最大限活かすために、何をするか・しないかを意識しましょう。
睡眠を十分に取る(介護中にたまった睡眠不足を返す)
自分の健康診断・歯科・整形外科など後回しにしていた受診
友人と会う・外食する・旅行する
趣味・読書・映画など「自分のための時間」
介護に関係ない仕事・勉強に集中する
頻繁に施設に電話して様子を確認する
「何かあったら」と常にスマホを気にする
施設に急に会いに行く(本人が落ち着きにくくなる)
「預けている罪悪感」を感じ続けて何もできない
施設への不満を家族内でふくらませる
まとめ
まとめ
- 「申し訳ない」という罪悪感の正体は思い込み。介護者が休むことが長期的な在宅介護継続につながる
- 初回は1泊2日から。帰宅日をカレンダーに書く・好きなものを持参・デイと同じ施設を選ぶで不安が激減する
- 施設選びは「名前で呼ぶか」「ショートと本入所で差がないか」「緊急時対応を説明できるか」の3点で見極める
- 「迎えに来て」という電話は、帰宅日を短く伝えて切る。毎回駆けつけると継続できなくなる
- ショートステイ中は本当に休む。頻繁な確認電話はしない。施設を信頼することが本人にとってもプラス
- 厚生労働省「短期入所生活介護・短期入所療養介護」→ mhlw.go.jp
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」→ mhlw.go.jp
- 国立長寿医療研究センター「介護者のレスパイトケアに関する研究」