認定調査の仕組みと全体の流れ

要介護認定は、認定調査員による「認定調査」と主治医が書く「主治医意見書」の2つをもとに、介護認定審査会が総合的に判定します。申請から結果通知まで原則30日以内ですが、実際には混雑や書類不備で30〜60日かかる場合もあります。

1
市区町村の窓口(または地域包括支援センター)に申請
申請日
介護保険被保険者証・本人確認書類・主治医情報が必要。代理申請も可。
2
認定調査員が自宅または施設を訪問
申請から1〜2週間以内
74項目を確認。所要時間は30〜60分程度。家族の同席が可能(推奨)。
3
主治医意見書の作成(同時進行)
申請後〜1か月程度
市区町村が主治医に直接依頼。家族からも日常の状態を伝えておくと有効。
4
介護認定審査会で判定
月数回開催
調査結果・主治医意見書をもとに、5名の専門家が合議で要介護度を判定。
5
結果通知・介護保険証が届く
申請から原則30日以内
認定結果は郵送で通知。「要支援1〜2」または「要介護1〜5」が決まる。
💡 74項目の6カテゴリ:①身体機能・起居動作(立ち上がり・歩行・寝返り等)②生活機能(食事・排泄・入浴・着替え等)③認知機能(記憶・見当識・意思の伝達等)④精神・行動障害(徘徊・暴言・幻覚等)⑤社会生活への適応(服薬・金銭管理等)⑥特別な医療(吸引・点滴・透析等)。各項目は「できる/一部介助必要/全介助」で評価されます。
👩
鈴木典子さん(仮名)・63歳・パート(長女) 認知症の母の認定調査で「要支援2」になってしまった経験

最初の調査で母が「全部できます、大丈夫です」と繰り返して、結果は要支援2でした。実際は毎日入浴介助が必要で、夜中に徘徊もある状態なのに。次の区分変更申請では1週間分の介護記録メモを持参して、調査員に「今日は比較的良い日です」と最初に伝えました。結果は要介護2になり、やっと実態に合ったサービスを受けられるようになりました。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

「低く出てしまう」よくある5つの失敗例

失敗パターン なぜ低くなるか
本人が「大丈夫です」「自分でできます」と答えてしまう プライドや気遣いから実態より良く答えてしまい、介助の必要性が伝わらない
調査当日に「張り切って」いつも以上に動いてしまう 普段とかけ離れたパフォーマンスが評価の基準になってしまう
家族が同席せず、本人だけで調査を受ける 夜間の様子・BPSDの頻度・最悪の状態が一切伝わらない
主治医に事前連絡をしない 意見書に日常の具体的なエピソードが書かれず、認定に不利になる
認知症の「良い日」に調査が当たる 日内変動があると、たまたま良い状態の日に調査が当たって過小評価される

調査前の準備:介護記録メモの作り方

調査前の1〜2週間、毎日の状態を記録しておきましょう。「調査員に見せる書類」として提示することで、口頭説明より格段に伝わりやすくなります。

📝 介護記録メモの書き方例(そのまま参考にできます)
食事
「半分以上は自力で食べるが、箸を持つ・食器を持つことが難しく毎食付き添いが必要。むせが週3回程度ある」
入浴
「一人では浴室に入れない。シャンプー・体を洗う・体を拭く・着替えすべてに介助が必要。週4回入浴(うち2回は機械浴)」
排泄
「夜間の失禁が週3〜4日ある。夜中2〜3時に1〜2回起床。紙パンツ常用。トイレ誘導は毎回声がけが必要」
移動
「室内は伝い歩き。一人での外出は不可。この2か月で転倒が3回(うち1回は救急受診)。屋外は車椅子使用」
認知・行動
「1日に同じ質問を20〜30回繰り返す。昨日のことを覚えていない。夜中に外に出ようとすることが週4日程度ある」
⚠️ 最悪の状態を書くのは「嘘をつく」ことではありません。認定調査の評価基準は「普段どうか(最も頻度の高い状態)」です。「たまに調子の良い日もあるが、週の大半はこの状態」という事実を正確に伝えることが重要です。

調査前に準備する3つのこと

調査当日:伝え方のNG・OKと6つのコツ

✅ 調査当日にやること・言うこと(6つのコツ)
  • 家族は必ず同席する:本人が正確に答えられない情報を補足する役割
  • 「今日は比較的良い日です」と最初に前置きする:認知症の日内変動がある場合は必ず伝える
  • 「介護記録メモを持ってきました」と書面を提示する:口頭より正確に伝わる
  • 「この1〜2週間で困ったこと」を具体的に話す:「先週、一人でトイレに行って転倒した」など事実ベースで
  • 頻度を数字で伝える:「週5日以上」「1日3回」「この2か月で3回転倒」など
  • 本人が「できる」と言ったら家族が補足する:「実際には毎回介助が必要で、一人ではできません」

具体的な伝え方のNG・OK例

❌ NG(漠然とした伝え方) ✅ OK(具体的な伝え方)
「入浴はちょっと手伝っています」 「毎日、シャンプー・体を洗う・体を拭く・着替えすべてに介助しています。一人では浴室に入れません」
「たまに夜中に起きます」 「週5日以上、夜中1〜3時に起き出して外に出ようとします。家族が交代で見張っており、睡眠が取れていません」
「少しもの忘れがあります」 「1日に同じ質問を20〜30回します。昨日食べたものを覚えていません。外出すると帰り道がわからなくなります」
「転んだことがあります」 「この2か月で3回転倒し、うち2回は救急受診しました。一人での移動は危険なため常に付き添っています」
👨
山本信夫さん(仮名)・57歳・会社員(長男) 父の認定調査でメモが効いた経験

最初の調査は準備なしで行って要介護1でした。父の状態からすると要介護2は必要なはずなのに、と思って区分変更を申請しました。2回目は1週間分の記録をまとめたA4の紙を持参して、調査員に「見ていただけますか」と最初に渡しました。調査員がメモを読みながら「これはいつ頃から?」と具体的に聞いてきて、今まで伝えられていなかったことが全部話せました。結果は要介護2になりました。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

主治医への働きかけ方

認定調査と同じくらい、主治医意見書が認定結果に大きく影響します。市区町村が主治医に直接依頼しますが、家族からも働きかけることができます。

認知症の「取り繕い問題」への対処法

認知症の方は調査員(見知らぬ人)の前で「しっかりしよう」と普段以上の状態を見せることがあります。これを「取り繕い行動」といい、実態より良い評価につながりやすい認知症特有の問題です。

認知症の取り繕いに対応する3つの方法
  • 調査員に「事前にメモを渡す」:「今日は比較的良い状態です。普段の様子を書いたものをご覧ください」と調査開始前に渡す
  • 本人が席を外している隙に補足する:「実は今日は良い日で、普段の半分以上の日はこういう状態です」と伝える場を作る
  • 調査後に「特記事項補足書」として書面提出:多くの市区町村では調査後に家族からの補足書面を受け付けている。市区町村の担当窓口に確認する
⚠️ 認知症の日内変動(午前は良くて午後は混乱する、など)がある場合、調査を午後に設定してもらうよう依頼することも選択肢の一つです。市区町村または調査員に「午後の調査をお願いできますか」と相談してみましょう。
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結果に不満があった場合の2つの選択肢

「認定結果が実態と合っていない」と感じた場合、2つの対応方法があります。

🔄 区分変更申請(実用的)
  • 状態が悪化した・前回の認定が実態と合わないと感じるとき
  • 次の調査に向けて準備を整え直せる
  • 有効期間内でもいつでも申請可能
  • 申請→調査→結果まで同じ流れ。今度こそ準備を万全に
⚖️ 不服申立て(審査請求)
  • 結果通知の翌日から60日以内に申請が必要
  • 都道府県の介護保険審査会に審査を請求
  • 「調査・判定のプロセスに問題があった」場合に有効
  • 結果が変わらなかったとしても区分変更申請は別途可能
💡 どちらを選ぶか迷ったらケアマネジャーに相談しましょう。「認定が実態に合っていないと感じる」と伝えれば、次の対応策を一緒に考えてくれます。区分変更申請のほうが手続きとして使いやすいケースが多いです。
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橋本幸子さん(仮名)・60歳・専業主婦(長女) 2度の区分変更申請を経験した経験

最初の認定が「要支援1」で、半年後に区分変更を申請しました。でもその時も準備不足で「要支援2」止まり。3か月後に再度区分変更を申請する時は、ケアマネさんに「同席してもらえますか」とお願いしました。ケアマネさんが調査員に「週4日の夜間排泄介助と転倒が続いていること」を補足してくれて、要介護1になりました。専門職に頼ることの大切さを実感しました。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

まとめ:認定調査で実態通りの評価を得るために

  1. 調査前の1〜2週間、介護記録メモを作成して調査員に提示する
  2. 家族は必ず同席して、本人が「できる」と言ったら具体的に補足する
  3. 主治医に事前連絡して、介護記録メモのコピーを渡す
  4. 認知症の取り繕いがある場合は「今日は良い日」と前置きして、別の時間帯の調査を相談する
  5. 結果に不満があれば区分変更申請を。次の調査に向けて準備を整え直す
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参考・出典
  • 厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」→ https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「認定調査員テキスト(2009年度改訂版)」
  • 各都道府県介護保険審査会(不服申立て先)
※ 認定調査の方法・審査のプロセスは市区町村・都道府県によって異なる場合があります。詳細は担当のケアマネジャーまたは市区町村の介護保険担当窓口にご確認ください。