嚥下困難と誤嚥性肺炎のリスク
加齢や病気によって「飲み込む力(嚥下機能)」が低下すると、食べ物や飲み物が誤って気管に入る「誤嚥」が起きやすくなります。誤嚥が繰り返されると、口の中の細菌が肺に入り込んで起こる誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
- 高齢者の肺炎の多くは誤嚥性肺炎が原因とされる
- 繰り返すと肺機能が低下し、命に関わる事態に発展することがある
- 「むせないから大丈夫」は誤り。むせずに気管に入る「不顕性誤嚥」が特に危険
- 食事中だけでなく、就寝中に口腔内の唾液を誤嚥するリスクもある
食事の問題は「食べが悪くなった」で終わらず、誤嚥→肺炎→入院→体力低下→寝たきりという流れにつながりかねません。早めに食事形態を見直し、安全に食べる環境を整えることが最大の予防です。
飲み込みが悪くなってきたサイン
以下のサインが複数見られたら、早めに主治医や言語聴覚士(ST)に相談してください。
食事形態の4段階と選び方
食事形態は、嚥下機能の低下度合いに合わせて段階的に変えていきます。いきなりミキサー食にするのではなく、食べる力に合った形態を選ぶことが大切です。
とろみの付け方と濃さの目安
お茶・水・みそ汁など液体は嚥下困難の方が最もむせやすいもの。とろみ剤(増粘剤)を使って適切なとろみをつけることが誤嚥予防の基本です。
- 薄いとろみ:フォークですくうと流れ落ちるが、水よりゆっくり。軽度の嚥下困難に。コップで飲める。
- 中とろみ:スプーンですくえる程度。中等度の嚥下困難に。スプーンで介助して飲ませる。
- 濃いとろみ:スプーンで形が保てる程度。高度の嚥下困難に。ゼリー状に近い。
- 混ぜる順番:まず液体を用意してからとろみ剤を加え、素早くかき混ぜる
- 待つ時間:種類によって1〜3分待つことで適切な粘度になる(製品の説明書を確認)
- 温度変化に注意:温かいものは冷えるととろみが強くなる。温度が安定した状態で調整する
- とろみの確認:スプーンで確認しながら加減する。多すぎると逆に飲み込みにくくなる
食事介助のコツ(姿勢・環境・声かけ)
姿勢の整え方
- 上体を60〜90度に起こす:リクライニングが必要な方は30〜45度から始め、飲み込めるなら徐々に角度を上げる
- 首を少し前に傾ける(あごを引く):気道が狭くなり誤嚥しにくくなる
- 足が床に着く高さ:不安定な姿勢はむせを誘発しやすい
食事環境の整え方
- テレビ・会話など気が散るものを減らす(集中して食べられる環境に)
- 食事は「元気な時間帯」に合わせる(朝食より昼食の方が体力がある場合が多い)
- 一口量は少なめに。「急かさない」ことが重要
声かけの工夫
- 「次は〇〇を食べてみましょう」と予告してから口に運ぶ
- 「飲み込んだ?」と確認してから次の一口を入れる
- 「もっと食べて」は禁物。食べる量より「安全に食べられているか」を優先する
食事支援に役立つグッズ・介護食
体験談
母が脳梗塞を起こした後、飲み込みがうまくできなくなって。退院後は「何を食べさせればいいかわからない」で毎日パニックでした。言語聴覚士さんに相談したら食事形態を丁寧に教えてもらえて、とろみ剤の使い方も実演してもらいました。今はミキサー食とペースト食を組み合わせて作っています。最初は「かわいそう」と思っていたけど、母が安心して食べられることの方が大事だと気づきました。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
父が「食べない」と言い張って、毎日の食事が戦場みたいになっていたんです。管理栄養士さんに相談して分かったのは、「好きなものを少量から」という基本でした。父は昔からプリンが大好きだったので、栄養ゼリーのプリン味から始めたら少しずつ食べるようになりました。「食べさせなきゃ」というプレッシャーを手放したことで、父も私も楽になれた気がします。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
母が最近むせることが増えて、お茶を飲ませるたびにヒヤヒヤしていました。ケアマネさんに言ったら言語聴覚士の訪問を手配してくれて、「薄めのとろみ」なら安全と教えてもらいました。とろみ剤を楽天で買って試してみたら、母も「これなら飲みやすい」と言ってくれて。大げさな準備じゃなくてよかったです。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
よくある質問
まとめ
- 嚥下困難は誤嚥性肺炎につながる。むせなくても誤嚥している「不顕性誤嚥」に注意
- チェックリストで2つ以上当てはまったら、早めに主治医・言語聴覚士に相談する
- 食事形態は「食べる力」に合わせて段階的に変える。いきなりミキサー食にする必要はない
- とろみの濃さは3段階。濃すぎても飲み込みにくくなるため、専門家の指示で調整する
- 「きざみ食」は誤嚥しやすいことがある。専門家に適切な食形態を確認する
- 市販の介護食・栄養ゼリーを上手に活用して、介護者の負担を減らすことも大切
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」→ jsdr.or.jp
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」→ mhlw.go.jp