介護費用は税金で「取り戻せる」部分がある
介護にかかるお金は月10万円を超えることも珍しくありません。施設への入居となれば月20〜35万円になることもあります。こうした費用の負担を少しでも軽くする手段の一つが、税制上の控除を使った「確定申告による還付」です。
「確定申告は会社員には関係ない」と思っている方もいますが、会社員でも医療費控除と障害者控除は確定申告(または年末調整)で申告できます。申告漏れは純粋に損失です。
介護に関連して使える主な控除は3つあります。
いずれも「自動的に適用される」ものではなく、申告しなければ受け取れません。この記事では、それぞれの仕組み・対象条件・申告方法を順番に解説します。
介護が始まって3年間、確定申告なんて関係ないと思ってました。去年、ケアマネさんに「医療費控除と障害者控除、両方使えますよ」と言われて初めて申告したら、3万円以上戻ってきた。過去2年分も遡って申告できると知って、慌てて手続きしました。こういうこと、誰かが教えてくれないと絶対に気づかないですよね。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
①医療費控除|介護サービス費も対象になる
医療費控除とは、1年間(1月〜12月)に支払った医療費の合計が10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合、超えた分の金額を課税所得から差し引ける制度です。
ポイントは、介護保険サービスの費用の一部も「医療費」として計上できるという点です。ただし、すべての介護サービスが対象になるわけではなく、「医療系サービス」と「福祉系サービス」で扱いが異なります。
対象になる介護サービス(医療系)
| サービス名 | 対象 | 備考 |
|---|---|---|
| 訪問看護 | 対象 | 医師の指示に基づく訪問看護 |
| 訪問リハビリテーション | 対象 | 理学療法士・作業療法士等の訪問 |
| 通所リハビリテーション(デイケア) | 対象 | 老健・病院・診療所が運営するもの |
| 短期入所療養介護(医療型ショートステイ) | 対象 | 老健・病院・診療所が運営するもの |
| 居宅療養管理指導 | 対象 | 医師・歯科医師・薬剤師等の訪問 |
| 訪問介護(身体介護) | 条件付き | 医療系サービスと同一事業者が提供する場合のみ対象 |
| 通所介護(デイサービス) | 対象外 | 単独では医療費控除の対象外 |
| 訪問介護(生活援助のみ) | 対象外 | 家事援助・調理・掃除等は対象外 |
| 短期入所生活介護(福祉型ショートステイ) | 対象外 | 特養等が運営する短期入所は対象外 |
施設入所の場合
| 施設の種類 | 対象 | 控除できる費用の範囲 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 対象 | 施設サービス費の自己負担額の1/2 |
| 介護老人保健施設(老健) | 対象 | 施設サービス費の自己負担額の全額 |
| 介護医療院 | 対象 | 施設サービス費の自己負担額の全額 |
| 介護付き有料老人ホーム | 条件付き | 介護サービス費(特定施設サービス費)の自己負担分のみ |
| 住宅型有料老人ホーム | 条件付き | 外部の医療系介護サービス費のみ(家賃・食費は対象外) |
控除額 = 50万円 − 10万円(足切り)= 40万円
還付額 = 40万円 × 20% = 8万円
②障害者控除|要介護認定があれば申告できる
障害者手帳を持っていなくても、要介護認定を受けた方は「障害者控除」の対象になれることをご存知でしょうか。介護家族の中でもこの制度を知らずに申告していないケースが非常に多くあります。
要介護認定と障害者控除の関係
65歳以上で要介護認定を受けた方は、市区町村が認める場合に「障害者」として所得税の控除を受けることができます。控除額は次のとおりです。
| 区分 | 主な対象(目安) | 控除額(所得税) | 控除額(住民税) |
|---|---|---|---|
| 障害者控除 | 要介護1〜2程度 | 27万円 | 26万円 |
| 特別障害者控除 | 要介護3〜5程度 | 40万円 | 30万円 |
ただし、要介護認定の度合いと区分はイコールではなく、市区町村の判断によります。実際の認定書に記載された区分を確認してください。
障害者控除対象者認定書の取り方
障害者控除を受けるには、市区町村の窓口(介護保険担当課)に申請し、「障害者控除対象者認定書」を取得する必要があります。この認定書は障害者手帳とは別のものです。
- 市区町村の介護保険担当窓口(または高齢者福祉課)に「障害者控除対象者認定書の交付申請書」を提出する
- 要介護認定の状況をもとに市区町村が審査(通常1〜2週間)
- 「障害者控除対象者認定書」が郵送または窓口で交付される
- 確定申告の際に認定書の内容を申告書に記載する(原則として提出不要だが保管は必要)
- 認定書は当該年の1月1日時点の状況をもとに交付される(年度をまたぐ場合は各年分が必要)
- 過去にさかのぼって申請できる(確定申告は5年前まで遡及可能)
- 認定書の交付は無料。窓口に持参するものは介護保険被保険者証と本人確認書類
父が特養に入ってから3年間、確定申告で何も申告していませんでした。去年、税理士の友人に相談したら「障害者控除申告できますよ」と。市役所で認定書を取って特別障害者控除を申告したら、所得税と住民税合わせて年7万円以上の節税になりました。3年分遡れたので、合計20万円以上が戻ってきた計算です。申告しないのは本当にもったいない。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
③扶養控除|親を扶養家族にできる条件
要介護の親を子が「扶養家族」として申告することで、子の課税所得を減らすことができます。条件は次のとおりです。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 親の合計所得 | 年間48万円以下(給与収入のみなら103万円以下) |
| 生計の一致 | 生活費を同一の財布から出していること(同居不要) |
| 他の扶養との重複 | 他の子が同じ親を扶養申告していないこと |
| 親の年齢・同居状況 | 控除額(所得税) |
|---|---|
| 70歳未満 | 38万円 |
| 70歳以上・別居 | 48万円(老人扶養親族) |
| 70歳以上・同居 | 58万円(同居老親等加算) |
年金収入が多い親の場合は合計所得が48万円を超えてしまう可能性があります。まず親の収入状況を確認してから申告可否を判断してください。
医療費控除 vs 障害者控除|どちらが得か
医療費控除と障害者控除は同時に使えます(重複申告可)。ただし、特養など一部の施設サービス費については、医療費控除で計上した費用と障害者控除を同時に適用することに制限がある場合があります。
一般的な比較の目安として、介護サービスの対象費用が少ない場合(年間10万円程度)は障害者控除の方が控除額が大きくなりやすく、在宅で複数の医療系サービスを多く利用している場合は医療費控除の効果が高くなります。
確定申告の具体的な手順
確定申告は毎年2月16日〜3月15日に行います(還付申告は1月から可能)。会社員で給与所得のみの方は、年末調整では医療費控除・障害者控除を申告できないため、別途確定申告が必要です。
- 領収書・支払い記録を集める:介護サービスの領収書、病院・薬局の領収書をすべて手元に揃える。介護サービス事業者から「医療費のお知らせ」が発行されている場合はそれも使える。
- 医療費控除の対象か確認する:本記事の一覧表を参照し、対象サービスの費用だけを合計する。
- 障害者控除対象者認定書を取得する(障害者控除を申告する場合):市区町村窓口で申請。
- 確定申告書を作成する:国税庁「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)から作成が最も簡単。スマートフォンでも手続き可能。
- 申告する:e-Tax(オンライン)、税務署への郵送、窓口持参のいずれかで提出。
- 還付金の受け取り:申告後1〜2ヶ月で指定口座に振り込まれる。
- 介護サービスの領収書(全件)または医療費のお知らせ
- 病院・薬局・歯科の領収書
- 障害者控除対象者認定書(障害者控除を申告する場合)
- 介護保険被保険者証(施設名・サービス種別の確認用)
- 源泉徴収票(会社員の場合)
- マイナンバーカードまたは通知カード
- 還付金の振込先口座(通帳またはキャッシュカード)
最初は確定申告が怖くて、税理士に頼もうかとも思ったんですが、e-Taxで入力したら思ったより簡単でした。領収書を全部スキャンして金額を入力するだけで、医療費控除も障害者控除も一緒に申告できた。2時間かからなかったし、還付された5万円はそのまま介護費用に回しました。毎年やらないと損だと今は思っています。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
控除だけでは補えない費用への備え
税金控除で年間数万円を取り戻せるとしても、介護費用の総額から見れば一部にすぎません。在宅介護でも月10〜15万円、施設入居なら月20〜35万円になることを考えると、年金収入だけでは毎月の不足が続く家庭は少なくありません。
税控除を最大限活用した上で、「それでも足りない部分をどう備えるか」を考えることが家族の安心につながります。介護保険や医療保険の見直し、積み立て型の保険商品の活用など、一人ひとりの状況に合った方法はFP(ファイナンシャルプランナー)への相談で整理できます。
相談料0円・強引な勧誘なしのFP無料相談サービスを活用してみましょう。
控除を活用した上で、
保険の備えは十分ですか?
税控除で取り戻せる金額には限りがあります。毎月の不足分を補う保険の活用法を、FPと一緒に考えてみましょう。相談料は0円です。
エリア別に介護施設・サービスを探す
介護費用の実態はエリアによって異なります。施設の費用相場・利用できるサービスの種類をエリアごとに確認してみましょう。
まとめ
介護の税金控除|今すぐできること
- 訪問看護・デイケアなど医療系介護サービスの領収書を保管する(医療費控除の準備)
- 市区町村窓口に「障害者控除対象者認定書」の交付を申請する(要介護認定があれば可)
- 親の年収が103万円以下であれば扶養控除の対象になるか確認する
- 毎年2月〜3月の確定申告(または1月からの還付申告)で申告する
- 過去5年分は遡って申告できる。申告漏れがあれば今からでも間に合う
- 控除で取り戻せる金額を確認した上で、足りない部分の備えをFPに相談する
税金控除は「知っている人だけが得をする制度」です。介護が始まったタイミングで一度、担当ケアマネジャーや市区町村の窓口に「使える制度はないか」と聞いてみることを強くおすすめします。
介護費用の全体像については介護にかかるお金の全体像、施設費用を抑える制度については負担限度額認定・高額介護サービス費もあわせてご覧ください。
- 国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」→ https://www.nta.go.jp/
- 国税庁「介護保険制度に係る居宅サービスの対価に係る医療費控除について」→ https://www.nta.go.jp/
- 国税庁「障害者控除」→ https://www.nta.go.jp/
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」→ https://www.mhlw.go.jp/