区分支給限度基準額とは——毎月の「利用枠」

介護保険は「かかった費用の1〜3割を払えば、いくらでも使える」制度ではありません。要介護度ごとに、1か月に保険を使えるサービス量の上限が決められています。これを区分支給限度基準額(くぶんしきゅうげんどきじゅんがく)といいます。

上限は金額ではなく「単位(たんい)」で決められています。1単位はおおよそ10円で計算されますが、サービスの種類や地域によって単価が少し変わります(都市部は高め)。たとえば「要介護3=27,048単位」なら、金額にしておおよそ月27万円分のサービスまでが保険の対象、というイメージです。

まず押さえる3つのこと
  • 介護保険は要介護度ごとに毎月の利用上限がある
  • 上限は「単位」で管理(1単位≒10円、地域・サービスで変動)
  • デイサービス・訪問介護・訪問看護・ショートステイなどが、この共通の枠を使い合う

ケアマネジャーは、この上限を超えないようにケアプランを組むのが基本です。そのため多くの人は上限を意識せずに済んでいますが、状態が重くなってサービスを増やしたいときに、この上限が壁になってきます。

超えたらどうなる?——全額自己負担のしくみ

上限(区分支給限度基準額)を超えてサービスを使うことはできます。ただし、超えた分については介護保険が使えず、全額自己負担(10割)になります。

かんたんな例(要介護2・1割負担の人)

要介護2の上限は約19,705単位(およそ19.7万円分)。
・枠の中で19万円分使う → 自己負担は1割の約1.9万円
・さらに3万円分を追加で使う → その3万円は全額(10割)自己負担
→ 合計の自己負担は「約1.9万円+3万円=約4.9万円」に跳ね上がります。

このように、上限を超えた瞬間に負担の増え方が急に大きくなるのが、この制度のいちばん注意すべき点です。「少しくらい超えても1割だろう」と思っていると、想定外の請求になることがあります。ケアプランを増やすときは、「限度額を超えますか?超えるなら自己負担はいくら増えますか?」を必ずケアマネジャーに確認してください。

要介護度別・上限のめやす

要支援・要介護度ごとの上限(1か月)のめやすです。単位数は全国共通ですが、金額は1単位あたりの地域単価で変わるため、あくまで「1単位=10円」で計算した目安です。

区分 1か月の上限(単位) 金額のめやす(1単位10円換算)
要支援15,032単位約50,320円
要支援210,531単位約105,310円
要介護116,765単位約167,650円
要介護219,705単位約197,050円
要介護327,048単位約270,480円
要介護430,938単位約309,380円
要介護536,217単位約362,170円

この「金額のめやす」はサービスの総額(10割)です。実際に毎月払うのは、原則その1〜3割(枠内の場合)です。自分の負担割合は、市区町村から届く「介護保険負担割合証」で確認できます。要介護度が上がるほど枠は大きくなるので、「今の状態に、今の要介護度が合っているか」が費用を左右します。

限度額に「含まれないもの」に注意

混乱しやすいのですが、介護保険のすべてがこの上限に含まれるわけではありません。次のものは限度額とは別枠で、上限の計算には入りません。

限度額に含まれないもの扱い
福祉用具の購入費年間10万円まで(別枠)。福祉用具の記事参照
住宅改修費原則20万円まで(別枠)。介護リフォームの記事参照
居宅療養管理指導医師・薬剤師などの訪問指導は別枠
施設サービス・特定施設特養・老健や介護付き有料老人ホームの介護費は、この枠とは別のしくみ

つまり、住宅改修や福祉用具購入をしても、デイサービスや訪問介護の枠が減るわけではありません。「上限が心配で福祉用具の購入をためらう」必要はない、ということです。

上限を超えそうなときの4つの対処法

「サービスを増やしたいけれど上限が心配」というときは、次の順番で検討します。

① 状態が重くなっているなら「区分変更申請」

前回の認定より心身の状態が悪化しているなら、要介護度そのものを見直す「区分変更申請」ができます。要介護度が上がれば上限(枠)も広がり、より多くのサービスを1〜3割負担で使えるようになります。認定の有効期間の途中でも申請できます。手続きは区分変更申請の記事で詳しく解説しています。「限度額が足りない」と感じたら、まずここを疑うのが基本です。

② ケアプランを見直す

今のサービスの組み合わせにムダや優先順位のズレがないか、ケアマネジャーと見直します。「本当に必要な回数か」「同じ目的でより安いサービスに替えられないか」を整理するだけで、枠内に収まることもあります。

③ 保険外(自費)サービスで補う

上限を超えた分をすべて介護保険の10割で使うより、家事代行や民間の見守り・配食など、保険外サービスのほうが割安なこともあります。「保険のサービスを10割で足す」か「保険外で補う」か、金額を比べて選びます。

④ 家族・地域資源で分担する

自治体の総合事業、住民ボランティア、配食サービス、家族の役割分担などで、保険サービスを増やさずに支える方法もあります。地域包括支援センターに相談すると、地域で使える資源を教えてもらえます。

そして、在宅で毎月のように限度額を超え、10割負担がかさむようになってきたら、「施設のほうが総額では安く、家族の負担も軽い」という分岐点に来ていることがあります。在宅にこだわりすぎず、在宅か施設かの判断基準も一度確認してみてください。

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「負担限度額認定」との違い(混同注意)

名前がよく似ていて混同されるのが「負担限度額認定」です。これはまったく別の制度なので、区別しておきましょう。

制度何のための上限か
区分支給限度基準額(この記事)要介護度ごとの「使えるサービス量」の上限。超えると10割負担
負担限度額認定住民税非課税世帯などが対象。施設の食費・居住費を軽減する制度
高額介護サービス費1か月に払った自己負担額が上限を超えたら払い戻し

「限度額」という言葉が3つの制度で出てくるので混乱しがちですが、この記事のテーマ(区分支給限度基準額)は"サービスの量"の上限です。食費・居住費の軽減は負担限度額認定の記事、払った額の払い戻しは高額介護サービス費の記事を確認してください。3つを組み合わせると、介護費用の負担はかなり抑えられます。

まとめ:限度額オーバーで損をしないための5つのポイント

  1. 介護保険は要介護度ごとに毎月の利用上限(区分支給限度基準額)がある
  2. 上限を超えた分は1〜3割ではなく全額自己負担(10割)になる
  3. サービスを増やす前に「限度額を超えるか・自己負担はいくら増えるか」を必ず確認
  4. 超えそうなら①区分変更 ②ケアプラン見直し ③保険外 ④家族・地域資源で対処
  5. 「負担限度額認定」「高額介護サービス費」は別制度。3つを組み合わせて負担を軽く

よくある質問

限度額を超えてもサービスは使えますか?
使えます。ただし上限を超えた分は介護保険が適用されず、全額自己負担(10割)になります。使えなくなるのではなく、超過分の負担割合が大きくなる、という点に注意してください。
1単位はいくらですか?
1単位はおおよそ10円ですが、サービスの種類と地域によって単価が異なります(都市部は高め、10円〜11.4円程度)。正確な金額はケアマネジャーが計算してくれます。この記事の金額は1単位10円で計算した目安です。
限度額を超えそうなときはどうすればいいですか?
まず、状態が重くなっているなら区分変更申請で要介護度と枠の見直しを検討します。あわせてケアプランの見直し、保険外(自費)サービスの活用、家族・地域資源での分担を組み合わせます。担当のケアマネジャーに相談してください。
福祉用具の購入や住宅改修も限度額に含まれますか?
含まれません。福祉用具の購入費(年10万円まで)と住宅改修費(原則20万円まで)は、区分支給限度基準額とは別枠です。これらを使ってもデイサービスや訪問介護の枠は減りません。
「負担限度額認定」と同じものですか?
違います。この記事の区分支給限度基準額は『使えるサービス量』の上限です。負担限度額認定は『施設の食費・居住費』を軽減する別の制度で、住民税非課税世帯などが対象です。名前が似ているだけで内容は別物です。
要介護度が上がれば負担も増えますか?
要介護度が上がると使える上限(枠)が広がるため、同じ1割負担でも使うサービス量が増えれば自己負担額は増えます。ただし、必要なサービスを10割負担で使うよりは、区分変更で枠を広げて1〜3割で使うほうが多くの場合は安くなります。
※本記事は公的制度をもとにした一般的な解説であり、個別の給付判断について助言するものではありません。単位数・金額・負担割合は2026年7月時点の情報で、制度改定や個別の状況により異なります。実際の利用限度額・自己負担額はケアマネジャー・市区町村の介護保険窓口にご確認ください。本ページには広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。
出典・参考
  • 厚生労働省「介護保険制度」関連ページ(区分支給限度基準額)
  • 厚生労働省「区分支給限度基準額」(要介護度別の限度単位数・2024年度)
  • 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」(支給限度基準額の対象外となる給付)
  • ※単位数は2024年度の基準です。1単位あたりの金額は地域区分・サービス種類により異なります。