退院後の準備がなぜ急ぎなのか

「もうすぐ退院できますよ」という言葉は、家族にとって嬉しい反面、「何も準備できていない」という焦りをもたらします。病院のベッドが足りないため、回復期病院では平均在院日数が短く、退院まで2〜3週間しかないことも珍しくありません。

退院後に介護が必要な状態になった場合、何も手を打たずに自宅に戻ると、たった数日でまた入院・施設入居を余儀なくされるケースが起きます。「退院=回復」ではなく、「退院=在宅介護の始まり」という発想の転換が必要です。

⚠️ 要介護認定の申請から認定結果が出るまで約30日かかります。入院中に申請しないと、退院後に使いたいサービスがすぐ始められない事態になりえます。退院の見通しがついたら、すぐに動き始めましょう。

退院前カンファレンスで確認すること

退院前カンファレンスとは、担当医・看護師・リハビリ士・病院ソーシャルワーカー(MSW)と家族が一緒に退院後の生活を計画する会議です。多くの病院で実施しており、参加を求められていない場合でも「カンファレンスに参加したい」と申し出れば応じてもらえます。

この会議で聞き逃すと後で困る5つの質問を必ずメモしておきましょう。

退院前カンファレンスで必ず確認する5つの質問
  • ①退院後も必要な医療処置は何か(薬の管理・点滴・褥瘡処置・胃ろう管理など)
  • ②次に受診が必要なのはいつか・どこか(退院後の通院先・頻度)
  • ③自宅でできない場合、どの施設が適切か(老健・療養型病床・グループホームなど)
  • ④リハビリはいつまで続けるべきか(在宅でも続けられるか・通所リハは必要か)
  • ⑤緊急時はどこに連絡すればよいか(急変時の受け入れ先・夜間の対応)

病院のソーシャルワーカー(MSW)は、退院後の生活や施設探しの相談に乗ってくれる専門職です。「何から手をつければいいかわからない」という状態でも相談できます。遠慮なく声をかけてください。

在宅か施設かを判断する基準

「在宅か施設か」は、家族の中で意見が割れやすいテーマです。感情論になりがちですが、現実的な条件を一つひとつ確認することで判断しやすくなります。

在宅を選べる条件(すべて揃えば理想)

在宅に向いているケース
  • 本人が「家に帰りたい」と強く希望している
  • 日中・夜間に介護できる家族がいる(同居or近居)
  • 住宅環境が整えられる(バリアフリー改修・介護ベッド設置が可能)
  • 継続的な医療処置が不要、または訪問診療で対応できる
  • 認知症はあるが、徘徊・暴力などの行動症状が軽度

施設を視野に入れるべき条件

施設入居を検討すべきケース
  • 介護できる家族が近くにいない(遠距離・一人暮らし)
  • 家族全員が働いており日中の見守りができない
  • 24時間の医療管理が必要(人工呼吸器・胃ろう等)
  • 認知症の周辺症状(徘徊・暴力)が強く在宅では安全確保が難しい
  • 要介護4・5で身体介護の負担が大きすぎる

「施設に入れる=見捨てる」ではありません。本人が安全に、尊厳をもって生活できる場所を選ぶことが、本当の意味での介護です。在宅を選んだ場合でも、デイサービス・訪問介護・ショートステイを組み合わせれば、家族が無理なく続けられます。

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退院前にやること(ステップ別)

退院日が決まったら、以下のステップを優先度順に進めてください。すべて同時にこなす必要はありません。まずできるものから動き始めましょう。

  1. 1
    要介護認定の申請(入院中に動く)
    市区町村の介護保険窓口か地域包括支援センターに申請します。入院中でも認定調査員が病院に来てくれます。申請から結果まで約30日かかるため、退院が見えてきた段階で即動くことが重要です。
  2. 2
    ケアマネジャーの選定・契約
    退院後の在宅介護の「司令塔」となるケアマネジャーを選びます。病院のソーシャルワーカーに紹介してもらうのが最も手軽です。ケアマネはケアプランを作成し、訪問介護・デイサービス・福祉用具レンタルなどを一括して手配してくれます。
  3. 3
    退院前カンファレンスへの参加
    担当医・看護師・リハビリ士・ソーシャルワーカーと一緒に退院後の生活を確認します。前述の5つの質問を持参して、必要な情報を漏れなく収集してください。
  4. 4
    住宅環境の整備(介護ベッド・手すり・バリアフリー)
    介護ベッドや手すりは介護保険でレンタルできます。ケアマネジャーに相談すれば退院当日までに自宅への設置が可能です。段差解消・浴室の手すりなどの住宅改修は要介護認定後に申請できます。
  5. 5
    訪問診療・訪問看護の手配
    退院後も医療的管理が必要な場合は、在宅療養支援診療所(訪問診療)と訪問看護師を事前に手配します。ケアマネジャーかソーシャルワーカーに紹介してもらうのがスムーズです。

退院後1週間で整えること

退院直後は本人も家族も疲弊しています。「完璧を求めない」ことが長続きのコツです。まず最低限の体制を整えてから、少しずつ充実させていきましょう。

退院当日〜3日以内

1週間以内

「一人で抱え込まない」ための在宅サービスの組み合わせ例
  • 月〜金:訪問介護(朝の起床介助・食事・服薬確認)
  • 週2〜3回:デイサービス(昼間の預け先・入浴・リハビリ)
  • 月1〜2回:訪問診療(医師による定期チェック・処方)
  • 月1〜2回:ショートステイ(家族の休息・緊急時の受け入れ)
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体験談

👩
山田奈緒さん(仮名)・51歳・会社員(娘) 父・78歳が脳梗塞後に退院、在宅介護を選択した経験

父が倒れてから1か月後に「退院できます」と言われた瞬間、頭が真っ白になりました。家には手すりもないし、仕事もあるし——でも病院のソーシャルワーカーさんが「退院前カンファレンスをやりましょう」と声をかけてくれて。そこで必要なことを全部聞けたし、ケアマネさんも紹介してもらえた。退院当日には介護ベッドが設置されていて、「私が全部やらなくていいんだ」とわかったときに初めて深呼吸できました。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

👨
藤井雅彦さん(仮名)・59歳・会社員(息子) 母・82歳の退院で施設入居を選んだ経験

母は「家に帰りたい」と言っていたんですが、退院後の状態を見て在宅は難しいと判断しました。24時間の見守りが必要だったし、私は単身赴任で近くにいられない。最初は罪悪感でいっぱいでしたが、グループホームに入って環境が整ったら、母が「ここで良かった」と言ってくれるようになりました。「施設=見捨てる」じゃない、と今は思えています。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

👩
中島由美さん(仮名)・48歳・パート勤務(娘) 要介護認定を申請せず退院して後悔した経験から学んだこと

正直に言うと、入院中に要介護認定の申請ができることを知らなかったんです。退院してから申請して、認定が出るまでの1か月は、サービスも使えず家族だけでギリギリ対応していた。ヘトヘトでした。「退院が決まったら即申請」というのを知っていれば、こんなに苦労しなかった。今は同じ状況の友達には必ず「入院中に動いて!」と伝えています。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

よくある質問

退院後の介護準備はいつから始めればいいですか?
入院直後から動き始めるのが理想です。要介護認定の申請は入院中でも可能で、申請から認定まで約1か月かかるため早めに動くことが重要です。退院日が決まった段階でケアマネジャーの選定と退院前カンファレンスへの参加を優先してください。
退院前カンファレンスとは何ですか?
担当医・看護師・リハビリ士・ソーシャルワーカーなどと家族が一緒に、退院後の生活や必要なサービスを確認する会議です。在宅か施設かの方向性・必要な医療処置・介護サービスの内容をここで決めます。参加していない場合は「参加したい」と申し出てください。
退院後に在宅か施設かを判断する基準はありますか?
本人の意思が最優先です。その上で、医療的処置の継続が必要かどうか・家族の介護力(同居・仕事の状況)・住宅環境・認知症の程度などを総合的に判断します。在宅を選んだ場合でも、デイサービス・訪問介護・ショートステイを組み合わせれば家族だけで抱え込む必要はありません。
要介護認定を申請中でも退院後の介護サービスは使えますか?
はい。認定前でも暫定ケアプランを作成することで在宅介護サービスを利用開始できます。認定結果が出た後に自己負担割合が確定します。病院のソーシャルワーカーやケアマネジャーに相談すれば手続きをサポートしてもらえます。

まとめ

  1. 退院まで2〜3週間しかない場合も多い。「退院=介護の始まり」として、早期から動き出す
  2. 要介護認定は入院中に申請する。結果が出るまで約30日——退院後に申請では間に合わない
  3. 退院前カンファレンスに必ず参加し、退院後の医療処置・通院先・緊急時対応を確認する
  4. 在宅か施設かは「本人の意思+家族の介護力+住宅環境+医療的ニーズ」で総合判断する
  5. 在宅を選ぶ場合、デイ・訪問介護・ショートステイを組み合わせれば家族が一人で抱え込まなくてよい
  6. 困ったら病院のソーシャルワーカー、地域包括支援センター、ケアマネジャーに相談する
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参考・出典
  • 厚生労働省「介護保険制度の概要」→ mhlw.go.jp
  • 厚生労働省「在宅医療・介護連携推進事業について」→ mhlw.go.jp
※ 要介護認定の手続き・サービスの利用条件は市区町村によって異なる場合があります。詳細はお住まいの市区町村の介護保険窓口またはケアマネジャーにご確認ください。