なぜ実感より軽く出るのか:よくある4つの理由
「毎日こんなに大変なのに、要支援?」「前回より状態は悪くなっているのに、要介護度が下がった…」。要介護認定の結果を見て、そう感じるご家族は少なくありません。まず知っておきたいのは、認定結果が実感とずれるのには、仕組み上の理由があるということです。
この記事は介護保険の使い方を完全解説(申請の流れ・自己負担・サービス)の一部です。介護保険そのものの仕組みから確認したい方は、こちらをどうぞ。
① 調査の日だけ本人が張り切ってしまう:普段はできないことも、調査員の前では「できます」と頑張ってしまう方が多くいます
② 認知症は日によって波がある:たまたま調子の良い日に調査が当たると、普段の困りごとが伝わりにくくなります
③ 調査項目は「できるか」を中心に見る:動作が一応「できる」と、日常でどれだけ手がかかっているかが反映されにくいことがあります
④ 主治医意見書と調査結果のズレ:主治医が日常の生活状況を詳しく把握していないと、意見書に実態が反映されないことがあります
つまり、結果に納得できないのは「気のせい」ではなく、調査の日に実態が伝わりきらなかった可能性があるということです。だからこそ、感情的に窓口へ抗議するのではなく、これから紹介する手順で「なぜこの結果になったのか」を確認し、適切な方法でやり直すことが大切です。
まずやること:認定調査票と主治医意見書を開示請求する
納得できない結果が出たとき、いきなり申請をやり直す前にやっておきたいのが、「どの項目で軽く評価されたのか」を確認することです。
要介護認定の判定材料になった認定調査票(基本調査・特記事項)と主治医意見書は、市区町村に開示請求できます。家族が代理で請求できる場合も多いですが、必要な手続き(委任状・本人確認書類など)は自治体によって異なるため、まずはお住まいの市区町村の介護保険窓口に問い合わせてみてください。
- 調査票の各項目が、普段の状態と合っているか(「できる」「介助されていない」と評価されている項目に注目)
- 特記事項に、日常の困りごと(夜間の対応・見守り・認知症の症状など)が書かれているか
- 主治医意見書に、生活上の支障や認知症の状況が反映されているか
対処法①区分変更申請(実務上の第一選択)
認定結果に納得できないとき、実務でまず検討されることが多いのが「区分変更申請」です。本来は状態が変化したときに認定をやり直してもらう制度ですが、結果が実態と合っていない場合の見直し手段としても広く使われています。
- 結果が出るまで:申請から原則30日程度(混み合う時期はそれ以上かかることもあります)
- 回数制限なし:認定有効期間中いつでも申請できます
- ケアマネジャーに相談して進める:申請すべきかの判断や申請代行をサポートしてもらえます。まだケアマネジャーがいない場合は地域包括支援センターに相談できます
- 区分変更申請は「新たな認定」なので、再調査の結果、今より軽い要介護度になる可能性もゼロではありません
- リハビリなどで状態が改善している時期の申請は特に慎重に判断しましょう
- 前回と同じ準備不足のまま再調査を受けると、同じ結果になりやすいため、記録メモ・家族の同席・主治医への情報提供を整えてから申請するのがポイントです
要介護度が変わると自己負担も変わる、
費用の備えを早めに確認しましょう
認定結果の見直しを進めるタイミングは、介護費用全体を見直すチャンスでもあります。FPに無料で相談してみましょう。
対処法②審査請求(不服申立て)と使い分け早見表
もう一つの正式な手段が、都道府県の介護保険審査会への「審査請求(不服申立て)」です。「認定のプロセスや判定そのものに問題があった」と考える場合に、処分の取り消しを求める制度です。
- 申立て先は都道府県の介護保険審査会(窓口は市区町村を経由できる場合もあります)
- 期限は処分を知った日の翌日から原則3か月以内とされています
- ただし、結果が出るまで数か月かかることが多く、その間に使えるサービス量は変わりません
このため、実務では「早く結果を出せてやり直しもきく」区分変更申請がまず選ばれることが多い、というのが実情です。2つの制度の違いを表で整理します。
| 項目 | 区分変更申請 | 審査請求(不服申立て) |
|---|---|---|
| 申請先 | 市区町村の介護保険窓口 | 都道府県の介護保険審査会 |
| 期限 | 認定有効期間中いつでも(回数制限なし) | 処分を知った日の翌日から原則3か月以内 |
| 結果が出るまでの目安 | 原則30日程度 | 数か月かかることが多い |
| 内容 | 再調査を受けて新たに認定し直す | 認定(処分)の妥当性を審査してもらう |
| 向いているケース | 早くサービス量を見直したい/準備を整えて再調査に臨みたい | 調査・判定のプロセスに明らかな問題があったと考える場合 |
| 注意点 | 再調査で今より下がる可能性もある | 待っている間のサービス量は変わらない/期限を過ぎるとできない |
- 結果が早い(原則30日程度)
- 回数制限がなく、やり直しがきく
- ケアマネジャーのサポートを受けやすい
- 準備次第で実態に近い評価を目指せる
- 期限(原則3か月)を先に確認する
- 開示請求で得た調査票の内容を根拠にできるか検討
- 結果まで数か月かかる前提でスケジュールを考える
- 並行して区分変更を使えるかは自治体・状況によるため窓口に確認
対処法③次回の認定調査に備える
区分変更申請をするにしても、次の更新を待つにしても、次回の認定調査で「普段の状態」をきちんと伝えられるかどうかが結果を大きく左右します。前回と同じ受け方では、同じ結果になりやすいからです。
- 家族が調査に立ち会う:本人が「できます」と答えても、「実際には毎回介助しています」と具体的に補足できる人がそばにいることが重要です
- 日常の困りごとメモを作って調査員に渡す:1〜2週間分の食事・入浴・排泄・移動・夜間の様子・認知症の症状を、回数や頻度など具体的に記録しておきます
- 主治医に普段の状態を伝えておく:受診時に困りごとメモのコピーを渡し、意見書に日常の状態を反映してもらえるようお願いしておきます
誰に相談するか:ケアマネと地域包括支援センター
「納得できないけれど、どう動けばいいかわからない」というときは、一人で抱え込まずに専門職に相談しましょう。
担当のケアマネジャーがいる場合
まずは担当のケアマネジャーに「認定結果が実態と合っていない気がする」と率直に伝えてみてください。開示請求の進め方、区分変更申請のタイミング、再調査への準備まで、一緒に考えてもらえます。申請の代行をしてくれる場合も多いです。
ケアマネジャーがいない・要支援と判定された場合
地域包括支援センターが相談先になります。市区町村が設置している無料の相談窓口で、認定結果への対応を含めて介護全般の相談ができます。お住まいの地域の担当センターは、市区町村のホームページや介護保険窓口で確認できます。
- 認定結果(要介護度)と、結果に納得できない理由(普段の困りごととのズレ)
- 直近の状態変化(転倒・入院・認知症の症状の進行など)
- 今のサービスで足りていないこと(回数・時間・夜間対応など)
まとめ:納得できない結果への向き合い方
- 実感より軽く出るのには理由がある。感情的に抗議するより、仕組みに沿って動く
- まず認定調査票と主治医意見書を開示請求し、どこがズレたかを確認する
- 実務上の第一選択は区分変更申請(原則30日程度・回数制限なし)。ただし下がるリスクも知った上で準備して臨む
- 審査請求は原則3か月以内。期限だけは早めに確認しておく
- 次回の調査には家族の立ち会いと困りごとメモで備える
- 迷ったらケアマネジャーか地域包括支援センター(無料)に相談する
介護の手続き・サービスについて相談してみませんか
認定結果を待つ間のサービス調整、在宅介護の見直しなど。どちらも登録不要・完全無料です。
- 厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 各都道府県の介護保険審査会(審査請求・不服申立ての窓口)
- お住まいの市区町村の介護保険窓口(区分変更申請・認定調査票の開示請求)