介護保険料の全体像——誰がいつ、いくら払うのか

給与明細や年金の通知書に「介護保険料」という項目があることは知っていても、自分が実際にいくら払っているか、即答できる人は少ないのが実情です。でも、生涯トータルで見ると決して小さな金額ではありません。

介護保険料を払い始める年齢
40
誕生日の前日が属する月から
全国平均(65歳以上・月額)
6,225
2024〜2026年度・全国平均基準額
40歳から85歳まで払い続けると
約450万円
※あくまで試算・収入・地域で変動

介護保険料は一生涯払い続ける社会保険料です。40歳から亡くなるまで払い続けることを考えると、仕組みを知らないまま過ごすことは「情報の損失」にもなります。

まず大枠をつかんでおきましょう。介護保険の被保険者は年齢によって2つに分かれます。

〜39歳 介護保険料
なし
40〜64歳 第2号被保険者
健保に上乗せ
65歳〜 第1号被保険者
年金から天引き
💡 40〜64歳の第2号被保険者が介護保険サービスを使えるのは、特定疾病(16種類)が原因で要介護・要支援状態になった場合のみです。老化以外の原因では原則使えません。65歳からは理由を問わず使えるようになります。
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大野俊介さん(仮名)・42歳・会社員 給与明細を確認して初めて介護保険料の存在に気づく

40歳の誕生月に給与明細を見たら「介護保険料」という項目が増えていて、最初は何の引き落としかわかりませんでした。調べてみると月約4,500円も引かれていて、年間で54,000円。「自分が介護を受ける年齢じゃないのになぜ?」と最初は納得できませんでしたが、今の高齢者の介護を社会全体で支える仕組みだと知ってから、見方が変わりました。でも、もっと早く知っておけばよかったと思っています。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

40〜64歳(第2号)の保険料の仕組み

40〜64歳は「第2号被保険者」として、加入している医療保険(健康保険)に上乗せする形で介護保険料を払います。雇用形態によって計算方法が異なります。

会社員・公務員の場合(健康保険組合・協会けんぽ)

給与と賞与に介護保険料率を掛けた額が毎月の保険料です。会社と折半(労使折半)のため、実際に負担するのは計算額の半分です。

年収の目安 月額標準報酬 月の介護保険料(全額) 自己負担(折半後)
300万円程度 26万円 約4,800円 約2,400円
500万円程度 41万円 約7,600円 約3,800円
700万円程度 59万円 約10,900円 約5,450円

※協会けんぽの介護保険料率は2024年度で1.60%(全国一律)。給与明細の「介護保険料」欄はこの折半後の金額です。

自営業・フリーランスの場合(国民健康保険)

国民健康保険の保険料に介護分が含まれて請求されます。会社による折半がないため全額自己負担です。前年の所得をもとに市区町村が算定するため、退職した翌年は特に高くなりやすいです。

⚠️ 育児休業中の方へ:育休期間中、一定の要件を満たせば介護保険料を含む社会保険料が免除されます。職場の担当者または年金事務所へ確認してください。

65歳以上(第1号)の保険料の仕組み

65歳になると第1号被保険者に切り替わり、支払い方法が大きく変わります。仕組みを知らないままにしていると、「なぜ年金が少なくなった?」と混乱するケースがよくあります。

年金天引き(特別徴収)——年金受給月額18,000円以上の方

年金から自動的に差し引かれます。偶数月(2・4・6・8・10・12月)の年金支払い時に、2か月分がまとめて天引きされます。手続き不要で始まるため、気づかないうちに年金受給額が減っている方も多くいます。

口座振替・納付書(普通徴収)——年金受給月額18,000円未満の方

年金が少ない方や65歳になったばかりで特別徴収に切り替わっていない方は、市区町村から送られる納付書で支払います。

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田村節子さん(仮名)・67歳・元パート勤務 65歳で年金受給を開始し、介護保険料の天引きに気づく

65歳で年金をもらい始めたのですが、最初の通知書を見て「こんなに少ないの?」と驚きました。介護保険料と後期高齢者医療保険料(75歳から)のことを全く知らなかったので、年金額がそのままもらえると思っていたんです。事前に知っていれば老後の計画も変わっていたと思います。年金手帳を眺めるだけでなく、何が引かれるかを先に調べておくことが大事だと、今は強く思っています。

※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。

所得段階と月額の目安——自分はどこに当てはまるか

65歳以上の保険料は、所得に応じた「多段階制」です。住民税課税か非課税か、前年の合計所得がいくらかによって保険料が変わります。自分がどの段階か確認しておきましょう。

下の表は国の基本的な区分に基づく目安です(各市区町村が独自に9〜13段階以上で設定するため、実際の金額は「介護保険料決定通知書」で確認してください)。

段階 対象となる方の目安 基準額に対する割合 月額の目安(基準額6,225円の場合)
第1段階 生活保護受給者・老齢福祉年金受給者で世帯全員が住民税非課税 ×0.285 約1,774円
第2段階 世帯全員が住民税非課税・前年の合計所得+年金収入80万円以下 ×0.485 約3,019円
第3段階 世帯全員が住民税非課税・前年の合計所得+年金収入80〜120万円 ×0.685 約4,264円
第4段階 本人が住民税非課税・世帯に課税者あり・所得80万円以下 ×0.90 約5,603円
第5段階 本人が住民税非課税・世帯に課税者あり・所得80万円超 ×1.00(基準額) 約6,225円
第6段階 本人が住民税課税・合計所得120万円未満 ×1.20 約7,470円
第7段階 本人が住民税課税・合計所得120〜210万円未満 ×1.30 約8,093円
第8段階 本人が住民税課税・合計所得210〜320万円未満 ×1.50 約9,338円
第9段階 本人が住民税課税・合計所得320万円以上 ×1.70 約10,583円

表のハイライト行(第4・5段階)が全国平均的な水準です。ご自身の段階は市区町村から毎年6〜7月頃に届く「介護保険料決定通知書」に記載されています。

知らないと損する3つの軽減制度

介護保険料には、申請しないと受けられない軽減制度があります。対象になっているのに申請していない方が相当数います。

申請すると得られる可能性がある軽減制度
① 低所得者への保険料軽減強化(第1〜3段階)
住民税非課税世帯の第1〜3段階は、2015年度から公費(税金)による軽減強化が実施されています。第1段階は基準額の0.45倍→0.285倍に引き下げられています。対象者は自動的に適用されますが、所得の申告漏れがあると反映されないことがあります。毎年の確定申告・住民税申告を忘れずに。
② 災害・失業・病気による減額・猶予
大規模災害に見舞われた・失業した・長期入院したなど、生活が急変した場合は市区町村に申し出ることで介護保険料の減額または猶予が認められる場合があります。申請期限がある場合もあるため、早めに窓口へ相談してください。
③ 高額介護サービス費(サービス利用時)
介護保険サービスを実際に利用した場合、同じ月の自己負担合計が一定の上限を超えると超過分が後日返還されます。住民税非課税世帯は上限24,600円。自動的には返還されないため、初めて上限を超えた月に市区町村へ申請することが必要です(一度申請すれば以降は自動振込)。
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民間の保険は整っていますか?

公的介護保険は「費用の一部を補う」仕組みです。施設費・在宅サービス費の残りは自己負担。退職後の収入が減る中でその費用が重くなるリスクに、民間の介護保険や生命保険がどこまで対応できているか、FPに確認してみましょう。相談料は0円です。

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保険料が変わる4つのタイミング

介護保険料は「ずっと同じ」ではありません。下記の4つのタイミングで金額や支払い方法が変わります。知らずにいると家計計画が崩れることがあります。

タイミング 何が変わるか 注意点
40歳の誕生月 介護保険料の徴収が始まる 給与明細に新たに追加される。気づかない人も多い
退職・転職時 加入保険が変わり、計算方法が変わる 国保に切り替わると全額自己負担になり負担感が増す。前年収入が高い場合は翌年も高止まりする
65歳の誕生月 第1号に切り替わり、年金天引きが始まる 年金額が「思ったより少ない」と感じる原因になる。事前に年金見込み額から天引き分を引いた手取りを把握しておく
3年ごとの改定 市区町村が基準額を見直す 高齢化進行とともに上昇傾向。2024〜26年度の全国平均は前期比で約4%上昇した
⚠️ 「退職したら介護保険料が急に2倍になった」という声をよく聞きます。これは会社が半分を負担していた分が消えるためです。退職後の家計計画では、社会保険料の全額自己負担を必ず織り込んでください。

介護が現実になったとき

長年払い続けた介護保険料は、自分や家族が要介護状態になったときに初めて「使える権利」として機能します。ただし、介護保険でカバーできるのはあくまで費用の一部です。

在宅介護の場合、介護保険のサービスだけでは対応できない「すきま」——深夜の見守り、急な外出付き添い、話し相手など——が必ず生まれます。その部分を支える手段を、元気なうちから知っておくことが、いざというときの安心につながります。

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「介護保険」という言葉は知っていましたが、何十年も払い続けていたのに、いざ母が要介護になるまでどう使うかを全く知りませんでした。ケアマネさんに説明してもらって初めて、「40歳から払い続けてきたのはこのためだったんだ」と実感しました。もっと若いうちに仕組みを知っておけば、老後の備えの考え方も変わっていたと思います。

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介護保険の基準額は市区町村ごとに異なり、施設の充実度も地域差があります。実際にサービスを使い始める前に、お住まいの地域の情報を確認しておきましょう。

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まとめ

介護保険料について今日から変えられること

  1. 給与明細・年金通知書で自分の介護保険料を確認する——まず「いくら払っているか」を把握する
  2. 65歳以降は「決定通知書」で自分の所得段階を確認——段階が間違っていることもある
  3. 退職後の保険料上昇を事前に織り込んで老後計画を立てる——手取り年金額から逆算する
  4. 高額介護サービス費は自動返還されない——サービス利用を始めたら申請を忘れずに
  5. 低所得の方は軽減措置を確認——毎年の住民税申告を忘れると適用されないことがある
  6. 公的保険だけでは足りない部分を民間保険で補う——「払うだけ」を「備え」に変える

介護保険料は「使わなければ損」という性質のものではありません。しかし、使う権利は自分で申請しないと行使できないことが多い制度です。仕組みを知っておくことで、いざというときに慌てず、損せずに動けるようになります。

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参考・出典
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の税務・保険料計算のアドバイスではありません。正確な保険料額は市区町村の介護保険担当窓口、または年金事務所にご確認ください。