成年後見制度とは何か
成年後見制度は、認知症や知的障害・精神障害などで判断能力が低下した方の財産と権利を守るための法的な仕組みです。2000年(平成12年)に始まり、現在では年間約10万件の審判が行われています。
制度を使う主な目的は次の3つです。
- 財産管理:預貯金の出し入れ、不動産の売買・賃貸契約の締結
- 身上監護:入院・施設入居の手続き、介護サービス契約の締結
- 悪質業者・詐欺からの保護:不利な契約の取り消し
法定後見と任意後見の違い
成年後見制度には大きく2種類あります。状況に応じてどちらを使うか変わります。
| 比較項目 | 法定後見 | 任意後見 |
|---|---|---|
| 使えるタイミング | 判断能力が低下した後 | 判断能力がある間に契約 |
| 後見人の選び方 | 家庭裁判所が選任(希望申告可) | 本人が自分で選んで契約 |
| 申立者 | 本人・配偶者・4親等内の親族・検察官など | 本人(将来自分で決めておく) |
| 種類 | 後見・保佐・補助の3類型 | 任意後見契約のみ |
| 開始のタイミング | 審判確定後すぐに開始 | 判断能力が低下した後、家裁に申立して開始 |
- 自分が信頼できる人(家族・弁護士等)を後見人に指定できる
- 後見人の権限範囲を事前に決めておける
- 早めに準備することで「凍結前の対策」として機能する
- ただし任意後見は「判断能力が下がった後」に家庭裁判所に申立して発動する仕組みのため、事前の契約だけでは動かない点に注意
どんなときに使う制度か
法定後見を使う典型的な場面
- 認知症が進んで銀行での本人確認が難しくなった(施設費用の支払いができない)
- 不動産を売却して施設費用にあてたいが、本人が契約できない
- 悪質商法で不利な契約を締結してしまい、取り消したい
- 相続手続きで本人が遺産分割協議に参加できない
任意後見を準備しておくべき場面
- 認知症の診断は受けていないが、「もしもの場合」に備えたい
- 子どもがいない・遠方に住んでいるため、老後の財産管理を誰かに頼みたい
- 自分の後見人は「○○に頼みたい」という意思があるうちに決めておきたい
申立手順と審判までの流れ
法定後見の申立から後見人が決まるまでには平均4〜6か月かかります。急いでいる場合でも、手続きの短縮は基本的にできません。早めに動き始めることが重要です。
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1
管轄の家庭裁判所に申立書類を準備する申立書・申立人の戸籍謄本・本人(被後見人)の診断書・財産目録などを準備します。書類は家庭裁判所のWebサイトでダウンロード可能。弁護士・司法書士に依頼すると書類作成を代行してもらえます。
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2
家庭裁判所へ申立(収入印紙800円〜+切手代)申立先は「本人の住所地を管轄する家庭裁判所」です。申立の種類(後見・保佐・補助)によって収入印紙額が変わります。後見は800円、保佐は1,600円、補助は2,400円です。
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3
家庭裁判所による調査・鑑定(1〜4か月)家庭裁判所の調査官が本人・申立人・候補者の後見人に面接します。必要と判断された場合は精神科医による鑑定も行われ、鑑定費用5〜10万円が発生します(費用は申立人が立て替え、後に本人の財産から回収)。
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4
審判・後見人の選任家庭裁判所が後見人を決定します。家族候補者を希望しても、財産規模や家族間の意見対立があると専門職(弁護士・司法書士)が選任されることがあります。
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5
後見登記・活動開始審判確定後、法務局に後見の登記がなされます。後見人は登記証明書を取得した上で、銀行口座の管理・施設契約などの法律行為ができるようになります。
費用の全体像(申立費用・後見人報酬)
申立にかかる初期費用
| 費用項目 | 金額目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 収入印紙(申立手数料) | 800〜2,400円 | 申立の種類による |
| 切手・郵便費用 | 数百〜数千円 | 裁判所によって異なる |
| 鑑定費用(必要な場合) | 5〜10万円 | 全体の約半数で鑑定なし |
| 弁護士・司法書士報酬(依頼した場合) | 10〜25万円 | 書類作成・申立代行 |
開始後の継続費用(後見人報酬)
後見が開始されると、後見人には家庭裁判所が毎年報酬を決定します。本人の財産から支払われます。
| 管理財産額 | 月額報酬の目安 |
|---|---|
| 1,000万円以下 | 月2万円程度 |
| 1,000〜5,000万円 | 月3〜4万円程度 |
| 5,000万円超 | 月5〜6万円程度 |
家族信託との違い
成年後見制度と混同されやすいのが「家族信託」です。どちらも認知症に備えた財産管理の手段ですが、仕組みと適した場面が異なります。
| 比較項目 | 成年後見(法定後見) | 家族信託 |
|---|---|---|
| 使えるタイミング | 判断能力低下後(事後的) | 判断能力があるうちに設定(事前) |
| 後見人・受託者の選択 | 家庭裁判所が選任 | 本人が自由に家族を指定できる |
| 運用の自由度 | 家庭裁判所の監督あり(制約大) | 信託契約の範囲内で比較的柔軟 |
| 継続費用 | 後見人報酬が毎月発生(月2〜6万円) | 信託報酬は任意(家族なら無報酬も可) |
| 身上監護 | 対応可(入院・施設入居の手続き) | 財産管理のみ(身上監護は別途必要) |
「今すぐ対応が必要な緊急案件(すでに認知症が進んでいる)」なら法定後見しか選択肢はありません。一方、「判断能力がある今から備える」なら家族信託と任意後見を組み合わせる方法が、費用・自由度の観点でメリットが大きいケースもあります。詳しくは弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。
体験談
母が認知症と診断されてしばらくして、銀行の窓口で「本人確認ができないので出金できません」と言われてしまいました。施設の費用が払えなくなって、あわてて成年後見を申立したんですが、審判が出るまで5か月かかった。その間、私が立て替えていました。もっと早く動いていれば、こんな事態にならなかったと思います。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
妻が61歳で若年性認知症の診断を受けました。不動産の賃料収入を管理しないといけなかったので、法定後見を申立しました。家族の自分が後見人になれると思っていたんですが、弁護士が選任されて。毎月4万円の報酬が発生しています。早めに任意後見を設定しておけばよかったと、今でも後悔しています。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
父が70歳のとき、自分から「もしもの備えをしたい」と言い出して、一緒に司法書士のところへ相談に行きました。任意後見契約を公正証書で結んで、私が任意後見人に指定されました。まだ発動はしていませんが、「いざとなったら動ける」という安心感が父にも私にもある。早めに動いてよかったと思っています。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
よくある質問
まとめ
- 成年後見制度は「法定後見(事後的)」と「任意後見(事前的)」の2種類。判断能力が低下している場合は法定後見しか使えない
- 法定後見の申立から審判まで4〜6か月かかる。認知症が進む前に動き始めることが重要
- 申立費用自体は安いが、後見人報酬(月2〜6万円)が本人の死亡まで継続的に発生する
- 家族を後見人に希望しても、財産規模や家族間の対立があると専門職が選任されることが多い
- 判断能力があるうちなら「家族信託+任意後見」の組み合わせが費用・自由度の観点で有利な場合がある
- 制度の選択は弁護士・司法書士などの専門家に相談することを強くおすすめする
- 最高裁判所「成年後見関係事件の概況」→ courts.go.jp
- 法務省「成年後見制度について」→ moj.go.jp