若年性認知症とは

若年性認知症とは、65歳未満で発症する認知症の総称です。病気の種類としてはアルツハイマー型、血管性、前頭側頭型、レビー小体型などがあり、これは高齢期の認知症と同じです。違うのは「起こる年齢」で、40代・50代、まれに30代でも発症します。全国の患者数は約3.5万人と推計されています。

いちばんの特徴は、働き盛りで、家庭でも中心的な役割を担っている時期に起こることです。そのため、本人の収入が減る・途絶えるという問題が、住宅ローン、子どもの教育費、配偶者の負担増と重なって、医療の問題であると同時に「家計と暮らしの問題」になります。認知症全般の基礎は認知症の種類の記事も参考になりますが、この記事では若年性ならではの「仕事とお金」に絞って解説します。

見逃されやすい初期サイン

若年性認知症は、本人も周囲も「まさかこの年齢で」と思うため、うつ病・更年期・疲れ・スランプと誤解されて受診が遅れやすいのが問題です。特に、もの忘れよりも先に「仕事ぶりの変化」として現れることがあります。

こんな変化が続くときは相談を
  • これまでできていた仕事の段取り・手順が急にうまくいかなくなった
  • 約束や会議を忘れる、同じ資料を何度も作る、ミスが増えた
  • 慣れた道で迷う、運転でヒヤリとすることが増えた
  • 料理・家計管理など、複数のことを同時に進めるのが難しくなった
  • 意欲の低下・気分の落ち込みが続く(うつと間違われやすい)

もの忘れの一般的なチェックは認知症の初期症状チェックリストも参考にしてください。大切なのは、「年齢的にありえない」と決めつけず、変化が続くなら早めに専門医に相談することです。早期診断は、使える制度を早く始めることに直結します。

何科を受診すればいい?

受診先は、もの忘れ外来・脳神経内科・精神科(神経科)・老年科などです。「もの忘れ外来」を掲げている医療機関や、認知症疾患医療センターが分かりやすい窓口です。

どこに行けばいいか迷うときは、まず地域包括支援センターやかかりつけ医に相談すると、適切な専門医療機関を紹介してもらえます。本人が受診を嫌がる場合の対応は受診を嫌がる人を説得する方法、診断後にやるべきことは認知症と診断されたら最初にすることが参考になります。

40歳以上なら介護保険が使える

「介護保険は65歳から」と思われがちですが、40〜64歳でも、特定の病気(特定疾病)が原因なら介護保険を使えます。これを第2号被保険者といい、若年性認知症(初老期における認知症)は、この特定疾病に含まれています

💡 40〜64歳で介護保険を使うには
  • 市区町村の窓口で要介護認定を申請する(65歳未満でも申請できる)
  • 認定されれば、デイサービス・訪問介護・ショートステイなどを1〜3割負担で利用できる
  • 若年性の人向けのデイサービスや、就労的な活動を取り入れた事業所もある

申請の手順は要介護認定の申請手順と同じです。介護保険料を払っている40歳以上なら、遠慮なく申請してください。診断がついたら、医療(治療)と介護(サービス)を早めに両輪で回すのが、本人の力を保ち、家族の負担を軽くするコツです。

お金を支える制度

若年性認知症で最も切実なのが収入の問題です。使える制度を知らずに退職して無収入になってしまう前に、次の制度を早めに確認してください。

制度内容
傷病手当金 会社員などの健康保険から、病気で働けない間の生活を支える給付。給与のおよそ3分の2が最長1年6か月。退職前に必ず確認
障害年金 一定以上の状態になると、現役世代でも受け取れる年金。障害基礎年金・障害厚生年金がある。初診日と保険料納付の要件がある
自立支援医療(精神通院) 精神科などの通院医療費の自己負担が原則1割に軽減される
精神障害者保健福祉手帳 税の控除・公共料金や交通の割引など。等級に応じた支援を受けられる
障害者控除 所得税・住民税の控除。要介護認定を受けていれば市区町村の「障害者控除対象者認定」で対象になる場合も。税の控除の記事参照
⚠️ 退職する前に、必ず制度の確認を。勢いで退職してしまうと、傷病手当金(在職中の病気が対象)を受けられなくなることがあります。「働けない=すぐ退職」ではありません。まずは休職・傷病手当金を検討し、会社の健康保険窓口や年金事務所、社会保険労務士に相談してください。

お金の管理そのものが難しくなってきたら、成年後見制度家族信託の準備も視野に入ります。認知症が進むと本人名義の預金が動かせなくなる(口座凍結)こともあるため、早めの備えが家族を守ります。

仕事をどうするか・相談窓口

診断を受けても、すぐに何もかもできなくなるわけではありません。環境を整えれば働き続けられる期間があります。会社に配置転換や業務の調整を相談する、就労継続支援(障害福祉サービス)を利用するなど、選択肢があります。

そして、若年性認知症には専門の相談窓口があります。ひとりで抱え込まず、まずここに電話してください。

若年性認知症の主な相談先
  • 若年性認知症支援コーディネーター——各都道府県に配置。医療・介護・就労・生活の相談を一括で受けてくれる中心的な窓口
  • 若年性認知症コールセンター——電話で相談できる全国窓口
  • 地域包括支援センター——身近な総合相談窓口。コーディネーターにもつないでくれる
  • 認知症疾患医療センター——診断・専門医療・家族支援

介護をする家族自身の心身も守ってください。若い世代の介護は「介護うつ」や共倒れのリスクも高くなります。介護うつを防ぐ方法や、症状が進んで在宅が難しくなったときの認知症でも入れる施設も、早めに知っておくと選択肢が広がります。

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まとめ:若年性認知症で家族が押さえる5つのこと

  1. 若年性認知症は65歳未満で発症。仕事とお金の問題が同時に来るのが特徴
  2. もの忘れより先に「仕事の段取りの乱れ」で気づくことがある。早めに専門医へ
  3. 40歳以上なら介護保険(第2号被保険者)を使える。要介護認定を申請する
  4. 退職する前に傷病手当金・障害年金・自立支援医療などを必ず確認
  5. 若年性認知症支援コーディネーターに相談。家族自身のケアも忘れずに

よくある質問

若年性認知症は何歳から何歳までですか?
65歳未満で発症した認知症を若年性認知症と呼びます。18歳〜64歳が対象で、40代・50代での発症が多く、まれに30代でも起こります。65歳以降に発症した場合は一般に高齢期の認知症として扱われます。
40代でも介護保険は使えますか?
使えます。40〜64歳の方は介護保険の第2号被保険者で、若年性認知症(初老期における認知症)は保険給付の対象となる特定疾病に含まれています。市区町村の窓口で要介護認定を申請してください。
仕事はすぐ辞めたほうがいいですか?
いいえ、すぐに辞める前に必ず制度を確認してください。在職中の病気を対象とする傷病手当金は、退職してしまうと受けられなくなることがあります。まず休職や業務調整、傷病手当金を検討し、会社の健康保険窓口や社会保険労務士に相談しましょう。
収入がなくなるのが不安です。どんな制度がありますか?
傷病手当金(健康保険)、障害年金、自立支援医療(通院医療費の軽減)、精神障害者保健福祉手帳、障害者控除などがあります。どれも申請が必要で、要件や初診日が関わるため、年金事務所・会社の健保・若年性認知症支援コーディネーターに早めに相談してください。
どこに相談すればいいですか?
各都道府県の若年性認知症支援コーディネーターが中心的な窓口です。医療・介護・就労・生活の相談をまとめて受けてくれます。身近な地域包括支援センターや、若年性認知症コールセンターでも相談できます。
親(本人)の預金や財産管理はどうすればいいですか?
認知症が進むと本人名義の預金が動かせなくなることがあります。判断能力があるうちに家族信託や任意後見を準備する、進んでからは成年後見制度を利用するなどの方法があります。成年後見・家族信託の記事も参考にしてください。
※本記事は公的制度をもとにした一般的な解説であり、個別の医療・年金・就労の判断について助言するものではありません。制度の要件・金額は2026年7月時点の情報で、改定や個別の状況により異なります。診断・治療は専門医、年金は年金事務所、就労・生活は若年性認知症支援コーディネーター等にご相談ください。本ページには広告(アフィリエイトリンク)が含まれます。
出典・参考
  • 厚生労働省「認知症施策」関連ページ(若年性認知症支援)
  • 厚生労働省「介護保険の特定疾病」(初老期における認知症=第2号被保険者の対象)
  • 日本医療研究開発機構(AMED)研究班「若年性認知症の有病率調査」(2020年、全国で約3.57万人と推計)
  • 日本年金機構「障害年金」、全国健康保険協会「傷病手当金」、各自治体「自立支援医療・精神障害者保健福祉手帳」