そろえる手段は3つ。境目は要介護1と2の間

介護用品をそろえる手段は、大きく分けて「借りる」「買う」「補助を使う」の3つです。どれが使えるかは、本人の要介護度で決まります。

手段中身自己負担
借りるレンタル介護保険の福祉用具貸与。車いす・介護ベッド・手すりなど13品目レンタル料の1〜3割
買う購入補助特定福祉用具販売。ポータブルトイレ・入浴用いすなど、肌に直接ふれる物が中心年度10万円までの1〜3割
補助を使う住宅改修(手すり・段差解消、20万円まで)、自治体の給付、医療費控除など制度による
いちばん大事な境目
  • 要支援1・2と要介護1:介護保険で借りられるのは手すり・スロープ・歩行器・歩行補助つえの4品目だけ。車いす・介護ベッドは原則借りられません
  • 要介護2から:車いす・介護ベッド・床ずれ防止用具など、ほぼすべての品目を借りられるようになります

要介護1で「ベッドが借りられない」と言われて困るケースはよくあります。その場合の選択肢(例外給付・区分変更・自費)は、下の要介護1の欄にまとめています。要支援2と要介護1の判定の違いそのものは要支援2と要介護1の違いで解説しています。

要介護度別|よく必要になる物の早見表

まず全体を一覧で確認し、ご家族に近い段階の欄を読んでください。「状態の目安」は一般的な例で、同じ要介護度でも必要な物は人によって違います。

段階よく必要になる物車いす・ベッドの保険レンタル
要支援1・2手すり、歩行器・つえ、入浴用いす×(原則)
要介護1上記+外出用の車いす、ベッド、ポータブルトイレ×(原則・例外給付あり)
要介護2介護ベッド、車いす、手すり○
要介護3ポータブルトイレ、おむつ・パッド、入浴用いす、床ずれ予防○
要介護4・5床ずれ防止マット、体位変換器、移動用リフト、おむつ○
要支援1・2転ばないための物が中心

状態の目安:身の回りのことはおおむね自分でできるが、立ち上がりや歩くときに不安がある。

  • よく必要になる物:手すり(工事不要のもの)、歩行器・つえ、入浴用いす、段差の解消
  • 使える制度:レンタルは4品目のみ。入浴用いすなどは購入補助、手すりの取り付けや段差解消は住宅改修(20万円まで)が使えます
要介護1車いす・ベッドが借りられない段階

状態の目安:立ち上がりや歩行が不安定。物忘れが生活に影響し始めることもある。

  • よく必要になる物:要支援の物に加えて、通院や外出のときの車いす、起き上がりがつらい場合の介護ベッド、夜のトイレ用のポータブルトイレ
  • 車いす・ベッドは原則レンタル対象外。ただし、医師の医学的な所見をもとにケアマネジャーが必要性を判断し、市区町村が確認すれば借りられる「例外給付」があります。まずケアマネジャーに相談してください
  • 状態が前より悪くなっているなら、認定の有効期間中でも区分変更を申請できます。要介護2になれば保険で借りられます
  • ポータブルトイレは要介護度に関係なく購入補助の対象です
要介護2車いす・ベッドを保険で借りられる

状態の目安:立ち上がり・歩行・排泄などに一部介助が必要。

  • よく必要になる物:介護ベッド(背上げ・高さ調整)、車いす、ベッド用手すり
  • 使える制度:自動排泄処理装置を除く12品目を借りられます。介護ベッドは購入すると高額なので、まずレンタルが基本です
要介護3排泄と入浴の介助が増える

状態の目安:立ち上がりや歩行が自力では難しく、排泄・入浴にも介助が必要。

  • よく必要になる物:ポータブルトイレ、大人用おむつ・尿取りパッド、入浴用いす、長く座る・寝る時間が増えたら床ずれ予防のマットやクッション
  • お金のポイント:おむつ代は、医師の「おむつ使用証明書」があれば医療費控除の対象になります
  • 特別養護老人ホーム(特養)に申し込めるのも原則として要介護3からです。在宅を続けるか迷い始める段階でもあります
要介護4・5寝ている時間が長くなる

状態の目安:日常生活のほぼすべてに介助が必要。寝ている時間が長い。

  • よく必要になる物:床ずれ防止用具(エアマットなど)、体位変換器、移動用リフト、おむつ
  • 使える制度:13品目すべてが対象になり、自動排泄処理装置も借りられます
  • 介護する家族の体の負担が大きくなる段階です。物で補えない部分は、訪問看護や施設も含めて考えてください

状況別|こんなときにそろえる物

要介護度とは別に、家族の状況によって先にそろえたい物が変わります。

🏥 退院が決まった

退院の日までに、ベッド・ポータブルトイレ・手すりを用意できるかが勝負です。認定の結果が出る前でも、暫定のケアプランでサービスを使い始められる場合があります。

🏠 親が一人暮らし

見守りと緊急時の連絡手段が先です。市区町村によっては、緊急通報装置を貸し出す事業があります。

🚄 離れて暮らしている

様子を遠くから確認できる見守りカメラやセンサーが役立ちます。

🧠 認知症がある

一人で外に出てしまう心配があるなら、徘徊対策が先です。徘徊感知機器の保険レンタルは要介護2からです。

👵 配偶者が介護している

介護する側も高齢なら、抱え上げずに済む物(背上げできるベッド、移るときの補助具)を優先してください。

🌙 夜中に何度も起こされる

夜のトイレが原因なら、ポータブルトイレや夜用のおむつ・パッドで減らせることがあります。

❄️ 冬が近い

浴室・脱衣所・トイレの寒暖差によるヒートショックは12〜2月に増えます。暖房の用意は早めに。

🍚 食べにくくなった

かむ・飲み込む力に合わせた介護食や、とろみ剤などの道具で食事を続けやすくなります。

お金が足りないとき|安い手段から順に

介護用品は、いきなり買う前に無料や補助で済むものがないかを確認してください。上から順に検討すると、自己負担を小さくできます。 制度ごとの探し方と窓口での聞き方は、介護用品にお金をかけられないときに使える制度8つで詳しく解説しています。

  1. 市区町村の給付・貸し出し:紙おむつの給付や購入費の助成、緊急通報装置の貸し出しなどを行う市区町村があります。対象や内容は地域で違うので、地域包括支援センターか市区町村の高齢者福祉の窓口で確認してください。
  2. 障害者手帳がある場合:車いすなどの補装具の費用が支給される制度があります。介護保険の対象品目は介護保険が優先されますが、体に合わせた特注品が必要な場合などは対象になることがあります。市区町村の障害福祉の窓口で確認してください。
  3. 介護保険で借りる:レンタル料の1〜3割負担。使わなくなったら返せます。→ 福祉用具レンタル完全ガイド
  4. 介護保険で買う:対象10品目を年度10万円まで1〜3割負担で。→ 買える10品目
  5. 住宅改修:手すりの取り付けや段差の解消に、20万円まで1〜3割負担。→ 介護リフォームの費用と補助
  6. あとで戻るお金:おむつ代は医師の「おむつ使用証明書」があれば医療費控除の対象。→ 医療費控除でいくら戻るか・介護の税金控除まとめ
  7. 生活保護を受けている場合:介護扶助で福祉用具や住宅改修も対象になります。→ 生活保護の介護扶助
  8. 自費で買う・借りる:上のどれも使えないときに。→ 介護ベッド・車いすの選び方
💡 介護用品だけでなく、介護費用全体が苦しいときは介護費用の補助金・軽減制度で使える制度を確認できます。月々の負担と貯蓄が何年もつかは介護費用シミュレーターで計算できます。

介護保険で借りられる13品目と要介護度ごとの可否

品目要支援1・2
要介護1
要介護2・3要介護4・5
車いす×○○
車いす付属品×○○
特殊寝台(介護ベッド)×○○
特殊寝台付属品×○○
床ずれ防止用具×○○
体位変換器×○○
認知症老人徘徊感知機器×○○
移動用リフト(つり具を除く)×○○
自動排泄処理装置××○
手すり(工事不要)○○○
スロープ(工事不要)○○○
歩行器○○○
歩行補助つえ○○○
⚠️ ×の品目も、医師の医学的な所見にもとづいて必要と認められれば借りられる場合があります(例外給付)。自動排泄処理装置のうち尿のみを吸引するタイプは、要介護3以下でも対象です。固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・つえ(単点・多点)は、2024年度から借りるか買うかを選べるようになりました。

介護保険で買える10品目と申請の流れ

肌に直接ふれる物や、レンタルになじまない物は「特定福祉用具販売」として購入費の補助が出ます。要介護度に関係なく、年度(4月〜翌3月)10万円まで、1〜3割の負担で買えます。

購入補助の対象品目
  • 腰掛便座(ポータブルトイレなど)
  • 入浴補助用具(入浴用いす・浴槽用手すり・浴槽内いすなど)
  • 簡易浴槽
  • 移動用リフトのつり具の部分
  • 自動排泄処理装置の交換可能部品
  • 排泄予測支援機器
  • 固定用スロープ・歩行器(歩行車を除く)・単点つえ・多点つえ(2024年度から購入も選べるようになった4品目)
1
ケアマネジャーに相談する
買いたい物と、対象になるかを確認します。認定前や担当がいない場合は地域包括支援センターへ。
2
指定を受けた事業者から買う
都道府県などの指定を受けた福祉用具販売事業者で購入し、領収書を保管します。指定外の店で買うと補助の対象外です。
3
市区町村に申請する
申請書・領収書・商品の説明資料などを提出します。いったん全額を払って後から戻る方式と、最初から自己負担分だけ払う方式があり、市区町村によって違います。

物では解決しなくなったら

用具をそろえても、介護する家族の体力や睡眠が限界に近いこともあります。それは用具選びの失敗ではなく、次の選択肢を考える時期のサインです。

よくある質問

要介護1でも介護ベッドや車いすは借りられますか?
原則として介護保険では借りられません。ただし、医師の医学的な所見をもとにケアマネジャーが必要と判断し、市区町村が確認すれば借りられる「例外給付」があります。状態が悪化しているなら区分変更を申請し、要介護2以上になれば保険で借りられます。
要介護2になると何が変わりますか?
車いす・介護ベッド・床ずれ防止用具・徘徊感知機器など、自動排泄処理装置を除く12品目を介護保険で借りられるようになります。
介護保険で買える物と、その上限は?
ポータブルトイレ・入浴用いすなどの10品目で、年度ごとに10万円まで、1〜3割の負担で買えます。指定を受けた事業者から買う必要があるので、購入前にケアマネジャーに相談してください。
お金がなくて介護用品をそろえられないときは?
市区町村の紙おむつ給付や緊急通報装置の貸し出し、障害者手帳がある場合の補装具の支給、医療費控除、生活保護の介護扶助などがあります。まず地域包括支援センターに相談すると、地域で使える制度を教えてもらえます。
何をそろえればいいか分からないときは、誰に相談すればいいですか?
ケアマネジャーがいれば、ケアマネジャーに「今いちばん困っていること」を伝えてください。福祉用具専門相談員が自宅を見て、状態に合った物を提案してくれます。認定前や担当がいない場合は地域包括支援センターが無料で相談に乗ります。

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参考・出典
  • 厚生労働省「福祉用具・住宅改修」→ https://www.mhlw.go.jp/
  • 厚生労働省「介護保険における福祉用具の選択制の導入(2024年度介護報酬改定)」
  • 国税庁「おむつ代についての医療費控除」→ https://www.nta.go.jp/
  • 公益財団法人テクノエイド協会「福祉用具情報システム」→ https://www.techno-aids.or.jp/
※ 介護保険の対象品目・費用・自治体の制度は、要介護度・地域・時期によって異なります。最新の情報はケアマネジャー、地域包括支援センター、市区町村の窓口でご確認ください。