「断られた」と言われたときに、まず知ってほしいこと
申し込みの書類をそろえて、見学にも行って、面談も受けて。それでも「今回は難しいです」と言われたとき、多くのご家族が「親を見捨てられた気がする」「うちは受け入れてもらえないのか」と落ち込まれます。その気持ちは、とても自然なものだと思います。
この記事は介護施設の種類と選び方(特養・有料・老健・グループホームの比較)の一部です。施設の種類から比べたい方は、まずこちらをご覧ください。
ただ、ここでひとつだけお伝えしたいことがあります。入居を断られるのは、ご本人やご家族の落ち度ではありません。施設には、看護職員の配置、夜間の人員体制、居室の設備、対応できる医療的ケアの範囲など、それぞれに決まった枠組みがあります。断られたということは、多くの場合「その施設の体制と、いまのご本人の状態が合わなかった」という組み合わせの問題です。ご本人の価値が否定されたわけでも、家族の努力が足りなかったわけでもありません。
大切なのは、ここで足を止めないことです。断られた理由さえ分かれば、次に当たるべき施設の種類は絞り込めます。この記事では、断られる理由を5つに整理し、それぞれ「では次に何をするか」を対応づけて説明します。
まず、断られた理由を具体的に聞く
断られた直後にやるべきことは、たったひとつです。「どの点が難しかったのか」を具体的に確認すること。ここを曖昧なままにすると、次に申し込む施設でも同じ理由で断られてしまう可能性があります。
連絡は電話で「今回は難しく…」と短く伝えられることが多く、そのまま「わかりました」と切ってしまいがちです。動揺しているときほど、聞き返す余裕がなくなります。だからこそ、あらかじめ聞くことを決めておくと落ち着いて対応できます。
- 「どの点が難しかったのでしょうか」…医療的ケアなのか、認知症の症状なのか、書類上の要件なのかを分けて聞く
- 「どういう状態であれば、受け入れが可能になりますか」…次に探す施設の条件が具体的になる
- 「体制や空室の状況が変われば、再度検討していただけますか」…再申し込みの可能性を残せる
- 「同じような状態の方を受け入れている施設をご存じですか」…地域の事情に詳しい相談員から情報をもらえることがある
これらを尋ねること自体は、失礼にはあたりません。施設に理由を説明する義務が定められているわけではないため、回答の詳しさは施設により異なりますが、多くの生活相談員は次の行き先を一緒に考えてくれます。
「今回は見送らせてください」と電話で言われて、頭が真っ白になってそのまま切ってしまいました。数日たってケアマネさんに話したら「理由を聞いてみましょう」と言ってくださって、一緒に電話を。すると「夜間は看護師がいないので、たんの吸引が必要な方は難しい」とはっきり教えてもらえたんです。理由が分かった途端、探す施設の条件が決まって、気持ちも前を向けました。断られたことより、理由が分からないことのほうがつらかったのだと思います。
※実在の方の体験談ではありません。よくある状況をもとに編集部が構成した例です。
断られる5つの理由と「次の一手」の全体像
入居を断られる理由は施設ごとに事情が異なりますが、一般に、次の5つに整理できることが多いとされています。まずは全体像を見て、ご自身のケースがどれに近いかを確認してみてください。
実際には、これらが複数重なっていることもあります。たとえば「医療的ケアが必要で、なおかつ身元保証人もいない」といったケースです。その場合も、ひとつずつ切り分けて対処していけば、道は狭まりすぎません。以下、順に見ていきます。
理由① 医療的ケアが施設の対応範囲外だった
もっとも多い理由のひとつが、必要な医療的ケアに施設が対応できないというものです。具体的には、たんの吸引、経管栄養(胃ろう・経鼻)、インスリン注射、在宅酸素療法、人工透析、中心静脈栄養、ストーマ管理などが挙げられます。
これらのケアは、看護職員がいる時間帯でなければ対応できないものが多く、夜間に看護師が常駐していない施設では受け入れが難しくなる傾向があります。同じ「有料老人ホーム」という名前でも、看護体制は施設ごとに大きく違うため、名称だけでは判断できません。
- 看護職員の配置が手厚い介護付き有料老人ホーム…「24時間看護師常駐」をうたう施設が候補になります
- 介護医療院…長期的な医療的ケアと生活の場を兼ねる施設として2018年度に創設された類型です
- 介護老人保健施設(老健)…医師の配置が要件になっており、医療的な管理を受けやすい環境です(在宅復帰を目的とする施設のため、利用期間の考え方は施設により異なります)
- 療養型の医療機関…状態によっては、施設ではなく医療機関での療養が適する場合もあります
なお、医療的ケアの内容や必要な頻度は状態によって変わります。今後の見通しについては、必ず主治医にご確認ください。「吸引の回数が減れば受け入れ可能」といった条件が示されることもあり、主治医の意見を施設に共有することで、判断が変わる場合もあります。
理由② 認知症の行動・心理症状への対応が難しかった
ひとりで外に出てしまう、夜間に大きな声が出る、他の入居者に手が出てしまう。こうした行動・心理症状(BPSD)を理由に、受け入れが難しいと判断されることがあります。とくに、他の入居者の安全にも関わる場面では、施設側が慎重にならざるを得ません。
ここで覚えておきたいのは、認知症そのものが理由で断られているわけではないということです。断られたのは「その症状に、その施設の人員・設備では対応しきれない」という判断であり、認知症の方を受け入れることを前提に設計された施設は別に存在します。
- グループホーム(認知症対応型共同生活介護)…認知症の方が少人数で共同生活を送る形態で、認知症ケアを前提とした職員体制が組まれています
- 認知症ケアに力を入れている介護付き有料老人ホーム・特養…研修体制や過去の受け入れ実績を確認してみましょう
- 主治医への相談…症状の背景に、体調不良・薬の影響・環境の変化・不安などが隠れていることがあります。医療的な判断は必ず医師にご相談ください
施設を探し直すことになったら、
費用の見通しも一緒に整えておく
施設の種類が変われば、毎月かかる費用も変わります。「いくらまでなら続けられるか」の目安を、FPに無料で相談できます。
理由③ 身元保証人がいない
「身元保証人(身元引受人)を立てられない」という理由で、申し込みが進まないことがあります。施設が保証人を求めるのは、費用の支払い、緊急時の連絡先、退去時の対応、亡くなられた後の手続きなど、いくつもの役割を想定しているためです。
ただし、保証人がいないことだけを理由に一律で受け入れを拒むことは、望ましくないという考え方が示されています。実際に、保証人なしで入居できる施設や、代替手段を認める施設もあります。
- 身元保証サービス(民間・NPO等)…契約内容と費用、預託金の管理方法をよく確認したうえで検討します
- 成年後見制度…判断能力が十分でない場合に、財産管理や契約を法的に支える仕組みです
- 自治体・社会福祉協議会の支援…日常生活自立支援事業など、地域によって使える仕組みがあります
- 保証人不要をうたう施設を探す…条件(連帯保証の有無、緊急連絡先の指定など)は施設により異なります
理由④ 費用の支払い能力が施設の想定に届かない
民間の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅では、入居時に収入・資産の確認が行われることがあります。毎月の利用料を長期間払い続けられるかという視点で見られるため、年金額が施設の想定に届かない場合、入居が難しいと判断されることがあります。
「お金がないから施設は無理なのか」と感じてしまう場面ですが、ここは公的な仕組みが比較的そろっている領域でもあります。探す施設の種類を変え、使える制度を組み合わせることで、選択肢は残ります。
- 特別養護老人ホーム(特養)…公的施設で、民間施設に比べて費用が抑えられる傾向があります(原則として要介護3以上が対象)
- 負担限度額認定…所得や資産の要件を満たす場合、特養・老健などの食費・居住費の負担が軽くなる仕組みです
- 高額介護サービス費…1か月の介護サービス費の自己負担に上限を設ける制度です
- 生活保護の介護扶助…生活が成り立たない状況では、福祉事務所に相談するという選択肢もあります
理由⑤ 待機順位が低い
特養などの公的施設では、申し込んだ順ではなく、必要性の高い方から入居できる仕組みがとられています。そのため「断られた」というより「今回は順番が回ってこなかった」という状態のことがあります。ご本人の状態が軽く見積もられているのではなく、より緊急性の高い方が先になった、という理解が実態に近い場合が多いです。
優先度は、要介護度、介護者の有無や状況、住まいの環境、認知症の症状などを総合して判断されるのが一般的です(評価の方法は自治体・施設により異なります)。
- 複数の施設に同時に申し込む…1件ずつ順番を待つより、候補を広げるほうが早く決まりやすい傾向があります
- 介護者側の事情を具体的に書く…「働きながら介護している」「介護者自身が通院中」「同居家族がいない」など、暮らしの実態を数字や頻度を添えて記載します
- 状況が変わったら伝える…入院、転倒、症状の進行、介護者の体調変化など、申し込み後の変化は施設や自治体の窓口に連絡します
- 申込書はケアマネジャーと一緒に書く…どこを具体的に書くべきかは専門職のほうが把握しています
次が決まるまでの「つなぎ」の選択肢
次の申し込み先が決まっても、入居までには時間がかかります。その間、在宅での介護が限界に近づいてしまうことがあります。「次が決まるまで我慢する」のではなく、つなぎの手を並行して打っておくことが、ご本人にとってもご家族にとっても安全です。
- 訪問介護・訪問看護の回数を増やす
- デイサービスの利用日を増やす
- 小規模多機能型居宅介護(通い・泊まり・訪問を一体で使う)
- 福祉用具や住宅改修で介護の負担を下げる
- ショートステイの連続利用(上限や運用は自治体・施設により異なります)
- 介護老人保健施設(老健)の利用
- 有料老人ホームの体験入居
- 状態によっては医療機関での療養
つなぎの利用には、支給限度額や自己負担の問題も関わってきます。どの組み合わせが現実的かは、ケアマネジャーとケアプランを見直しながら決めていくのが確実です。急ぎで探す必要がある場合の進め方は すぐに老人ホームへ入居させたいとき|緊急で探す方法とつなぎの選択肢 も参考にしてください。
断られた後にやってはいけない3つのこと
焦っているときほど、後で困る選択をしてしまいがちです。次の3つは避けておきたい行動です。
- 状態を軽めに伝えて申し込む…入居できても、必要なケアが受けられずご本人が苦しむことになります。入居後にミスマッチが判明し、退去を求められる場合もあります。「隠して入る」ことは、結局ご本人を守れません
- 1件断られただけで諦めてしまう…施設ごとに体制も空き状況も違います。断られた理由が同じでも、別の種類の施設なら受け入れられることは珍しくありません
- 家族だけで抱え込む…探し直しには情報量が要ります。ケアマネジャーや地域包括支援センターに共有するほど、候補は増えます。ご家族が倒れてしまっては、介護そのものが続きません
とくに1つ目について補足します。医療的ケアや行動・心理症状を控えめに伝えたくなる気持ちは、よく分かります。「これを言ったら断られる」と思うからです。けれど施設は、伝えられた情報をもとに人員配置や見守り体制を組みます。正確に伝えることは、ご本人が安全に暮らすための前提です。ありのままを伝えたうえで「対応できます」と言ってくれた施設のほうが、入居後の生活は安定しやすくなります。
相談先の使い分け
「誰に相談すればいいのか分からない」という声もよく聞きます。相談先には、それぞれ得意な領域があります。
- ケアマネジャー:全体の調整役。断られた理由の確認、次の候補探し、つなぎのサービス調整まで一貫して相談できます。まずはここから
- 施設の生活相談員:その施設の事情に最も詳しい立場。断られた理由や、地域で同じような状態の方を受け入れている施設の情報を聞ける場合があります
- 地域包括支援センター:公的な相談窓口。制度の使い方、成年後見、権利擁護、地域の社会資源など、公的な選択肢を幅広く相談できます(相談は無料)
- 市区町村の介護保険担当窓口:特養の申し込み方法、負担軽減制度、生活保護など、制度そのものの手続きを確認する場所
- 有料の紹介サービス:民間施設の空室情報を持っており、候補を一度に集められます。紹介料の仕組み(施設側から支払われるのが一般的)を理解したうえで、複数の情報源のひとつとして使うと安心です
母が夜中に外に出てしまうことがあって、有料老人ホームに2件申し込みましたが、どちらも難しいと言われました。正直、心が折れかけました。地域包括支援センターに相談したら「グループホームも見てみませんか」と教えてもらって、初めてその選択肢を知りました。少人数で、職員さんが母の名前を覚えて声をかけてくれる環境が合っていたようです。断られた2件は、うちに合わなかっただけだったのだと今は思えます。
※実在の方の体験談ではありません。よくある状況をもとに編集部が構成した例です。
まとめ:断られることは、通過点です
- 断られたのは施設の体制とご本人の状態が合わなかったということ。見捨てられたわけではありません
- まず「どの点が難しかったか」を具体的に確認する。ケアマネジャーの同席も有効です
- 理由は主に5つ。医療的ケア/認知症の症状/身元保証人/支払い能力/待機順位のどれかを特定すれば、次に当たる施設の種類は絞れます
- 次が決まるまではショートステイ・老健・小規模多機能・在宅サービスの増量などのつなぎを並行して手配する
- 状態を軽めに伝えて申し込むことは避ける。ありのままを伝えて「対応できる施設」を探すほうが、結果的に早道です
断られた日は、長く感じられると思います。それでも、理由が分かれば次の道は見えてきます。ひとりで抱えず、ケアマネジャーや地域包括支援センターに「断られました」とそのまま伝えてみてください。そこから、次の一歩がはじまります。
- 厚生労働省「介護・高齢者福祉」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「介護保険制度の概要」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム関連(サービスの種類)」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「認知症施策」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「生活保護制度」→ https://www.mhlw.go.jp/