生活保護を受けていても、介護サービスは使えます
「生活保護を受けているから、介護サービスなんて頼めないのではないか」——そう思って、必要な支援を我慢してしまう方は少なくありません。まず、いちばん大事なことをお伝えします。生活保護を受けていても、介護保険のサービスは利用できます。そして、その費用にあてるための「介護扶助」という制度が用意されています。
この記事は介護費用はいくら必要?月額・総額の目安と軽減制度の一部です。介護のお金を全体から把握したい方は、こちらにまとめています。
介護扶助は、特別な計らいでも例外的な措置でもありません。生活保護のしくみのなかに、はじめから組み込まれている当たり前の制度です。訪問介護に来てもらうことも、デイサービスに通うことも、手すりをつけることも、遠慮する理由はありません。
お金がないことを理由に、ご本人が身体を痛めたり、ご家族が一人で抱え込んだりする必要はないのです。この記事では、そのしくみと、実際に使い始めるまでの流れを順番に整理していきます。
介護扶助とは?8つの扶助のひとつ
生活保護は「保護費」という一本のお金ではなく、生活の場面ごとに8つの扶助に分かれています。介護扶助は、そのうちのひとつです。
- 生活扶助……食費・光熱費など日常の生活費
- 住宅扶助……家賃にあたる費用(地域ごとに上限あり)
- 教育扶助……義務教育に必要な費用
- 医療扶助……病院での診察・治療・薬の費用
- 介護扶助……介護保険サービスの利用者負担にあたる費用
- 出産扶助……出産にかかる費用
- 生業扶助……仕事に就くための技能習得などの費用
- 葬祭扶助……葬儀にかかる費用
介護扶助は、介護保険サービスを使ったときの利用者負担にあたる部分をまかなうものです。医療扶助が病院での窓口負担にあたる部分をカバーするのと、同じ考え方だと思っていただくとわかりやすいかもしれません。
そしてもうひとつ大切なのが、介護扶助は原則として「現物給付」だという点です。利用者がいったん立て替えて後から請求する、という形ではなく、費用は福祉事務所から事業所へ直接支払われるのが原則です。ですから、デイサービスの送迎車が来るたびに財布の中身を心配する、という状況にはなりにくいしくみになっています。
65歳以上と40〜64歳で扱いが違う
ここがこの記事の中心になる部分です。介護扶助のしくみは、年齢と、医療保険に加入しているかどうかによって2つに分かれます。「自分はどちらなのか」を知っておくと、福祉事務所での相談がぐっとスムーズになります。
65歳以上の場合
65歳以上の方は、生活保護を受けているかどうかにかかわらず介護保険の第1号被保険者になります。つまり、まず介護保険から給付があり、そのうえで残る自己負担分(原則1割)を介護扶助が負担するという二段構えです。
「では介護保険料はどうなるのか」という心配もよく聞かれます。65歳以上の方には介護保険料がかかりますが、その分は生活扶助に加算される形で対応されるのが原則です。生活費を削って保険料を捻出する、という形にはなりません。年金からの天引きになるか納付書払いになるかなど、実際の取り扱いは市区町村によって異なるため、担当のケースワーカーに確認しておくと安心です。
40〜64歳の場合
40〜64歳の方は、末期がんや初老期の認知症、脳血管疾患など「特定疾病」が原因で介護が必要と認められた場合に、介護保険の対象になります。年齢だけで対象になるわけではない、という点が65歳以上との大きな違いです。
そのうえで、生活保護を受けていて医療保険(健康保険や国民健康保険)に加入していない場合は、介護保険の被保険者にはなりません。この場合は介護保険からの給付がないため、かかった費用の全額(10割)を介護扶助が負担する形で介護サービスを利用することになります。
逆に、お勤め先の健康保険などに加入したまま生活保護を受けている場合は、介護保険の第2号被保険者となり、65歳以上の方と同じように「介護保険からの給付+自己負担分を介護扶助」という形になります。
- 介護保険の第1号被保険者になる
- 介護保険が給付(原則9割など)
- 残る自己負担分を介護扶助が負担
- 介護保険料は生活扶助に加算
- 介護保険の被保険者にはならない
- 介護扶助が全額(10割)を負担
- 特定疾病に該当するかの確認が必要
- 要介護認定に代わる要否判定を福祉事務所が行う
介護扶助の対象になるサービス
介護扶助でまかなわれるのは、施設の費用だけではありません。自宅で暮らしながら使うサービスも、幅広く対象になります。「在宅だから対象外なのでは」と思われがちですが、そんなことはありません。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 居宅介護支援 | ケアマネジャーによるケアプランの作成・サービス調整 |
| 訪問系サービス | 訪問介護(ホームヘルプ)、訪問入浴、訪問看護 など |
| 通所系サービス | 通所介護(デイサービス)、通所リハビリ など |
| 短期入所 | ショートステイ(短期入所生活介護など) |
| 福祉用具 | 車椅子・介護ベッドなどの貸与、特定福祉用具の購入 |
| 住宅改修 | 手すりの取り付け、段差の解消 など |
| 施設介護サービス | 特別養護老人ホームなどでの介護サービス費 |
| 移送 | 必要と認められる場合の移送にかかる費用 |
ここに挙げたのはあくまで代表的なものです。どのサービスがどこまで対象になるかは、ケアプランの内容と福祉事務所の判断によって決まります。「これは対象になりますか」と、遠慮なくケアマネジャーとケースワーカーの両方に聞いてみてください。聞くこと自体が、まったく問題のない普通の相談です。
利用開始までの5ステップ
在宅で介護サービスを使い始めるまでの流れは、次の5つです。難しく見えるかもしれませんが、実際にはケースワーカーとケアマネジャーが手続きを案内してくれます。ご自身ですべてを把握していなくても大丈夫です。
- 担当のケースワーカーに相談する……「介護のことで困っている」「訪問介護を使いたい」と伝えます。まずここが出発点です。介護扶助の対象になるか、どんな手続きが必要かを教えてもらえます
- 要介護認定を申請する(市区町村)……介護保険の窓口へ申請します。認定調査と主治医意見書をもとに要介護度が決まります。40〜64歳で介護保険の被保険者にならない方は、これに代わる要否判定を福祉事務所が行います
- ケアマネジャーを決め、ケアプランを作る……居宅介護支援事業所を選び、生活の困りごとをもとにケアプランを作成します。「何に困っているか」を率直に伝えることが、良いプランにつながります
- 福祉事務所が介護券を発行する……福祉事務所からサービス事業所へ「介護券」が発行され、費用は事業所へ直接支払われます。この段階でお金の流れが整います
- サービスの利用を開始する……訪問介護やデイサービスなどが始まります。使ってみて合わない部分があれば、ケアマネジャーに伝えてプランを見直せます
- ケースワーカーはお金(扶助)の担当、ケアマネジャーはサービス内容の担当。役割が分かれています
- どちらか一方にだけ話が伝わっていると、「ケアプランはできたのに介護券の手続きが進んでいない」といった行き違いが起きることがあります
- サービスを増やしたい・変えたいときは、ケアマネジャーに相談すると同時に、ケースワーカーにも一言伝えておくと安心です
- ケアマネジャーからケースワーカーへ直接連絡してもらうことも可能です。「連絡を取り合ってもらえますか」とお願いして構いません
母が転んでから家事が難しくなって、でも「生活保護なのにお願いしていいのかな」と何週間も言い出せませんでした。思い切ってケースワーカーさんに話したら、「それは介護扶助で対応できますよ」とあっさり。要介護認定を申請して、ケアマネさんと一緒にプランを作って、週3回ヘルパーさんに来てもらえるようになりました。お金の心配をせずに頼めるとわかって、母も私も気持ちが軽くなりました。もっと早く相談すればよかったです。
※実在の方の体験談ではありません。よくある状況をもとに編集部が構成した例です。
知っておきたい注意点
安心して使うために、あらかじめ知っておくと行き違いが減るポイントを整理します。どれも「気をつけないと叱られる」といった話ではなく、事前に一言相談しておけば済むことばかりです。
- 生活保護法の指定を受けた介護機関を利用する……事業所によっては指定を受けていない場合があります。契約前にケースワーカーへ確認を
- 福祉用具の購入・住宅改修は「事前の相談」が原則……先に買ってしまうと対象にならないことがあります。手すりの取り付けなども必ず事前に相談を
- 収入や資産の状況が変わったら申告する……年金額の変更や一時的な収入があった場合など。正確に伝えることで、扶助の計算が適切に行われます
- おむつ代など一部は別扱いになることがある……介護扶助ではなく他の扶助や実費の扱いになる費用もあります。何が対象かはケースワーカーに確認を
- 施設に入る場合は住宅扶助の上限も関係する……在宅とは考え方が変わるため、早めの相談が安心です
施設への入居を考えている場合
この記事では在宅で介護サービスを使う場合を中心に説明してきました。特別養護老人ホームなどの施設への入居を検討している場合は、住宅扶助の上限や施設ごとの対応状況など、在宅とは別に確認すべきことがあります。
生活保護で入りやすい施設の種類(特養・養護老人ホーム・ケアハウスなど)、扶助ごとの費用のカバー範囲、相談から入居までの手順は、別記事で詳しくまとめています。
生活保護を受けていない低所得の場合
「生活保護は受けていないけれど、介護費用がとても苦しい」という場合にも、負担を軽くする制度があります。生活保護だけが選択肢ではありません。
- 負担限度額認定……施設の食費・居住費を所得に応じて軽減
- 高額介護サービス費……ひと月の介護費用に上限を設ける
- 社会福祉法人等利用者負担軽減制度……対象法人のサービス利用者負担を軽減
- 生活困窮者自立支援制度……家計・住まい・仕事の相談ができる
- 地域包括支援センター……介護と生活の困りごとをまとめて相談
- 福祉事務所……生活保護そのものの相談も受け付けている
まとめ:介護扶助と上手につきあうために
- 生活保護を受けていても介護保険サービスは使える。介護扶助はそのための正規の制度
- 介護扶助は8つの扶助のひとつ。原則として現物給付で、窓口での支払いは基本的に生じない
- 65歳以上は「介護保険の給付+自己負担分を介護扶助」、40〜64歳で医療保険に未加入なら「介護扶助が全額」
- 介護保険料は、65歳以上の場合は生活扶助に加算される形で対応されるのが原則
- 利用の流れは、ケースワーカーへの相談 → 要介護認定 → ケアプラン作成 → 介護券の発行 → 利用開始
- 相談先はお住まいの地域を担当する福祉事務所(ケースワーカー)と地域包括支援センター。役割を分けて両方に伝えておくと行き違いが防げます
介護の悩み、ひとりで抱えないでください
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- 厚生労働省「生活保護制度」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「介護・高齢者福祉(介護保険制度の概要)」→ https://www.mhlw.go.jp/
- 厚生労働省「介護サービス情報公表システム」→ https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/
- 生活保護法(介護扶助・指定介護機関に関する規定)/介護保険法
最終更新:2026年8月11日