費用が払えなくなったら最初にすること
老人ホームの費用が払えなくなったとき、最も避けてはいけないのは「黙って滞納を続けること」です。滞納が続くと施設から退去勧告を受けることになり、次の住まいを探す時間がなくなります。
費用に困ったら、まず施設の担当者(生活相談員やケアマネジャー)に相談してください。施設側も「いきなり退去」は望んでいません。分割払いの相談・制度の紹介・別施設への転居支援など、一緒に出口を探してくれます。
- Step1:施設の担当者(生活相談員・ケアマネジャー)に今の状況を正直に話す
- Step2:市区町村の介護保険窓口で「使えていない軽減制度がないか」を確認する
- Step3:地域包括支援センターまたは福祉事務所に相談して次の選択肢を整理する
使い忘れが多い軽減制度5つ
費用が払えなくなる前に、まず「使えていない制度がないか」を確認することが先決です。知らずに損をしているケースが非常に多くあります。
①負担限度額認定(食費・居住費を大幅削減)
特養・老健・介護療養型医療施設などの介護保険施設では、所得・資産が一定以下なら食費と居住費の自己負担に上限が設けられます。市区町村に申請して「負担限度額認定証」を発行してもらう必要があります。
| 負担段階 | 対象者の目安 | 食費の上限(1日) | 居住費の上限(1日) |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者 | 300円 | 0〜820円 |
| 第2段階 | 住民税非課税・年金収入80万円以下等 | 390円 | 370〜820円 |
| 第3段階① | 住民税非課税・年金収入80万円超〜120万円以下 | 650円 | 370〜820円 |
| 第3段階② | 住民税非課税・年金収入120万円超 | 1,360円 | 370〜820円 |
※資産(預貯金等)の上限もあります。第2段階は650万円以下(単身)が目安。詳細は市区町村窓口で確認を。
②高額介護サービス費(月の上限超過分を還付)
介護保険サービスの自己負担額が月の上限を超えた場合、超過分が還付される制度です。申請しなければ還付されないため、市区町村から「支給申請書」が送られてきたら必ず手続きしてください。
| 所得区分 | 月の上限額(自己負担) |
|---|---|
| 現役並み所得者(年収約770万円以上) | 44,400円 |
| 一般(住民税課税) | 44,400円 |
| 住民税非課税世帯 | 24,600円 |
| 低所得(年金収入80万円以下等) | 15,000円 |
③社会福祉法人等による利用者負担軽減(最大25%減額)
特養などを運営する社会福祉法人が実施している軽減制度です。所得の低い方に対して、介護サービスの利用者負担・食費・居住費などが最大25%(老齢福祉年金受給者は50%)減額されます。対象施設に直接確認してください。
④介護保険料の減免(住民税非課税世帯向け)
災害や失業等の特別な事情がある場合、介護保険料が減額・免除される場合があります。市区町村の介護保険窓口に相談してください。
⑤高額医療・高額介護合算療養費(医療費と介護費の合計に上限)
同じ世帯で1年間に支払った医療費と介護費の自己負担合計が一定額を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。医療費が高い方と介護施設入居者が同一世帯にいる場合に有効です。
費用の安い施設への転居を検討する
民間の有料老人ホームでは月20〜30万円以上かかる場合がありますが、介護保険施設に転居することで大幅な費用削減が可能です。
| 施設の種類 | 月額費用の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 特養(特別養護老人ホーム) | 5〜15万円程度 | 原則要介護3以上。待機期間が長い(数か月〜数年) |
| 老健(介護老人保健施設) | 8〜15万円程度 | リハビリ主体。在宅復帰を目標とした短期利用が基本 |
| 介護療養型(介護医療院) | 8〜15万円程度 | 医療処置が必要な重度の方向け |
| サ高住(安価タイプ) | 12〜18万円程度 | 食事なし・サービス最低限の施設 |
生活保護と老人ホームの関係
「生活保護を受けている(または受けることになった)親は老人ホームに入れないのでは」と思っている方が多いですが、それは誤りです。
生活保護受給者が入居できる施設
- 特養(特別養護老人ホーム):生活保護受給者でも入居可能。費用は生活保護費から賄われる
- 老健・介護医療院:同様に生活保護の対象
- 生活保護に対応した有料老人ホーム・グループホーム:施設が生活保護の指定を受けていれば入居可能
- 申請先は住所地を管轄する福祉事務所(市区町村役所)
- 預貯金・不動産などの資産がある場合は先に活用することが原則(資産がゼロになる前に申請可能)
- 扶養照会(子どもへの確認連絡)が行われるが、子どもに強制的に支払わせることはできない
- 申請から決定まで2週間〜1か月程度かかる。遡及的に支給される
子どもの支払い義務について
「親が老人ホームの費用を払えなくなったら、子どもが払わなければいけない?」という心配をする家族が多くいます。
原則として、子どもには親の介護施設費用を支払う法的義務はありません。民法上の扶養義務はありますが、これは「自分の生活を犠牲にしてまで扶養する義務」ではなく、「余力の範囲での扶養義務」とされています。
体験談
父が入っていた有料老人ホームが月25万円で、年金と貯蓄でやりくりしていたんですが、3年目に貯蓄が底をついてしまいました。施設の相談員さんに話したら、まず「負担限度額認定証の申請はしていますか?」と聞かれて。全くしていなかったので申請したら食費・居住費が大幅に下がって、月5万円近く節約できました。その上で、特養の待機リストに入れてもらいました。早めに相談してよかったです。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
母が持病で働けなくなって、年金だけでは施設費用が払えない状態に。「生活保護だと施設に入れない」と思い込んでいたんですが、福祉事務所に相談したら全く違いました。生活保護を申請して、生活保護対応の施設を紹介してもらえた。今は月々の費用の心配なく、きちんとしたケアを受けられています。相談する前は恥ずかしいと思っていたけど、早めに動いてよかった。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
母の施設費用が払えなくなって、姉に「一緒に出してほしい」と言ったら大ゲンカになりました。姉は「自分の家のローンがある」と。ケアマネさんに相談したら、高額介護サービス費の還付を受けていないことがわかって。手続きしたら毎月1万5千円が戻ってきました。制度をちゃんと把握してから家族会議をするべきでした。
※体験談は一般的なケースをもとにした構成例です。実際の体験談は順次掲載予定です。
よくある質問
まとめ
- 費用が払えなくなったら「黙って滞納」せず、まず施設の担当者に正直に相談する
- 負担限度額認定・高額介護サービス費など使い忘れが多い軽減制度を先に確認する
- 民間施設から特養・老健への転居で月5〜15万円程度の費用削減が可能なケースがある
- 生活保護受給者でも特養・生活保護対応施設に入居できる。まず福祉事務所に相談
- 子どもに法的支払義務はないが、身元引受人・連帯保証人の契約内容には注意が必要
- 困ったら施設相談員・地域包括支援センター・福祉事務所のいずれかに早めに相談する
- 厚生労働省「介護保険の負担限度額認定について」→ mhlw.go.jp
- 厚生労働省「高額介護サービス費制度について」→ mhlw.go.jp