「非該当(自立)」とはどういう判定か
要介護認定を申請した結果、「非該当(自立)」という通知が届くことがあります。これは、現時点では介護保険の給付(要支援・要介護向けのサービス)の対象にはならないという判定です。「せっかく申請したのに、何も使えないの?」と落胆されるご家族は少なくありません。
この記事は介護保険の使い方を完全解説(申請の流れ・自己負担・サービス)の一部です。介護保険そのものの仕組みから確認したい方は、こちらをどうぞ。
ただ、ここで知っておいていただきたいのは、非該当は「支援が何も受けられない」という意味ではないということです。介護保険の給付以外にも、市区町村が提供する総合事業や一般介護予防事業、自治体独自の高齢者サービス、民間の自費サービスなど、使える選択肢は複数あります。そして状態が変われば、再申請はいつでも可能です。
- 非該当=「介護保険の給付対象外」であって、「支援ゼロ」ではない
- 市区町村の基本チェックリストに該当すれば、認定なしで総合事業のサービスを使える場合がある
- 転倒・入院・物忘れの進行など状態が変わったら、いつでも再申請できる(回数制限なし)
非該当のあとに使える4つの選択肢(図解)
非該当と判定されたあとの動き方を、先に全体像で確認しておきましょう。大きく分けると次の4つの選択肢があります。
それぞれの選択肢を、順番に詳しく見ていきましょう。
①基本チェックリストで使える「総合事業」
非該当だった方に、まず検討していただきたいのが「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」です。これは市区町村が実施している事業で、要介護認定を受けていなくても、「基本チェックリスト」に該当すれば訪問型サービス・通所型サービスを利用できる仕組みになっています。
基本チェックリストとは
基本チェックリストは、運動機能・栄養状態・口腔機能・閉じこもり・物忘れ・気分の落ち込みなど、生活機能の低下を確認する25項目の質問票です。要介護認定のような訪問調査や主治医意見書は不要で、窓口での聞き取りで比較的短期間に結果がわかるのが特徴です。
・訪問型サービス:ヘルパー等による掃除・洗濯・買い物などの生活援助
・通所型サービス:デイサービスに似た通いの場での運動・機能訓練など
※サービスの名称・内容・利用料は市区町村によって異なります。お住まいの自治体の内容は地域包括支援センターで確認できます。
相談の流れ
- 地域包括支援センターに相談する:「非該当だったが、生活で困っていることがある」と伝える。お住まいの地区の担当センターは市区町村の窓口で教えてもらえます
- 基本チェックリストを受ける:25項目の質問に回答。生活の困りごとを具体的に伝えるのがポイント
- 該当したら「事業対象者」として利用開始:ケアプランに相当する計画を作成してもらい、訪問型・通所型サービスの利用につなげる
- 要介護認定で非該当でも、基本チェックリストで該当するケースはめずらしくない(見ている項目が異なるため)
- 窓口は地域包括支援センター。相談は無料
- 「デイサービスのような通いの場」「ヘルパーのような生活援助」に近い支援を、認定なしで使える可能性がある
介護保険が使えない今こそ、
これからの介護費用の備えを確認しましょう
非該当の間は自費サービスの利用も選択肢になります。今後介護が本格化したときの費用も含めて、お金の準備をFPに無料で相談できます。
②65歳以上なら誰でも参加できる一般介護予防事業
総合事業のうち「一般介護予防事業」は、体操教室・介護予防教室・住民主体の通いの場など、65歳以上なら基本チェックリストの該当を問わず誰でも参加できるものが多いのが特徴です。非該当の方でも、そのまま参加を検討できます。
- 介護予防教室・体操教室:筋力低下や転倒を防ぐための運動プログラム。公民館・地域の集会所などで開催されることが多い
- 住民主体の通いの場(サロン等):閉じこもりを防ぎ、人との交流を保つ場。「最近外出が減った」という方に特におすすめ
- 口腔・栄養に関する教室:食べる力・栄養状態を維持するためのプログラム
「まだ介護は必要ないと判定されたけれど、体力の衰えは感じる」という段階でこうした場につながっておくことは、要介護状態になるのを遅らせるという意味でも大切です。開催情報は市区町村の広報誌や地域包括支援センターで確認できます。
③自治体の高齢者サービスも確認する
介護保険とは別に、多くの市区町村が独自の高齢者向けサービスを実施しています。非該当の方でも利用できるものが含まれている場合があるため、あわせて確認しておきましょう。
- 配食サービス:栄養バランスのとれた食事を自宅に届けてもらえる。安否確認を兼ねるものも多い
- 緊急通報装置の貸与・設置:一人暮らしの高齢者宅にボタン式の通報装置を設置し、緊急時に対応してもらえる
- ごみ出し支援:ごみを集積所まで運ぶのが難しい世帯への戸別収集など
- その他:紙おむつ支給、理美容サービス、外出支援など自治体によりさまざま
④自費・保険外サービスという選択肢
公的サービスの対象にならない部分は、自費(保険外)サービスで補う方法もあります。全額自己負担にはなりますが、対象条件や内容の制約がなく、必要なことを必要なぶんだけ頼める柔軟さがあります。
- 家事代行サービス:掃除・洗濯・調理・買い物など。高齢者向けプランを用意している事業者もある
- 民間の見守りサービス:センサー・カメラ・訪問型など。離れて暮らす家族の安心につながる
- 付き添い・外出支援サービス:通院の付き添い、買い物や散歩の同行など
- 民間の配食サービス:自治体の配食の対象にならない場合の選択肢
「毎日は必要ないけれど、週に1回だけ手を借りたい」といった段階では、自費サービスのほうが実情に合うこともあります。費用と必要な支援のバランスを見ながら、公的サービスと組み合わせて検討してみてください。
非該当の段階は、見守りの仕組みづくりや相談先の確保など、「本格的な介護が始まる前の準備」に向いた時期でもあります。あわせて読んでおくと安心な記事をまとめました。
再申請のタイミング|いつでも・何度でもできる
非該当と判定されても、それは「今の状態での判定」にすぎません。要介護認定の申請には回数制限がなく、いつでも再申請できます。非該当の直後でも、状態の変化があれば申請可能です。
ただし、状態が変わらないまま申請しても同じ結果になりやすいのも事実です。次のような「変化のきっかけ」があったら、ためらわずに再申請を検討してください。
- 転倒した・転倒しかけることが増えた
- 入院・手術をして体力が落ちた
- 物忘れが目に見えて進んだ(同じ話の繰り返し、鍋の焦がしなど)
- 家事や買い物など、前はできていたことができなくなった
- 外出が減り、閉じこもりがちになった
- 「いつ・何に困ったか」を日付入りでメモしておく
- 調査当日に本人が「できます」と言いがちな点を家族が補足できるようにする
- 主治医に日常の様子を伝えておく(意見書に反映されやすくなる)
- 地域包括支援センターに再申請のタイミングを相談する
結果に納得できない場合は「審査請求」もある
「明らかに介護が必要な状態なのに非該当なんておかしい」と感じる場合、都道府県の介護保険審査会に審査請求(不服申立て)を行う制度があります(結果を知った日の翌日から原則3か月以内が原則)。ただし、時間と労力がかかり、結果が変わらないケースもあります。
- 基本チェックリストを受けて総合事業の利用につなげる
- 状態の変化を記録し、変化があれば再申請する(いつでも可)
- 地域包括支援センターに相談しながら進められる
- 比較的短期間で「使える支援」にたどり着きやすい
- 結果を知った日の翌日から原則3か月以内が原則
- 都道府県の介護保険審査会に審査を請求
- 調査・判定の過程に問題があったと考えられる場合の手段
- 時間がかかり、結果が変わらないこともある
どちらを選ぶべきか一概には言えませんが、実務的には「総合事業+状態が変わったら再申請」を軸に検討しつつ、必要に応じて審査請求も視野に入れるという順番で考えると動きやすいケースが多いです。不服申立ての具体的な手順は 要介護認定に納得できない時の対処法 で詳しく解説しています。
まとめ:非該当でも「使える支援」はある
- 非該当(自立)=介護保険の給付対象外。ただし「支援が何もない」わけではない
- まず地域包括支援センターで基本チェックリストを受け、総合事業(訪問型・通所型)の利用を検討する
- 65歳以上なら参加しやすい一般介護予防事業(体操教室など)で、心身の衰えを予防する
- 配食・緊急通報装置などの自治体の高齢者サービスや、家事代行・見守りなどの自費サービスも組み合わせる
- 転倒・入院・物忘れの進行など状態が変わったら、ためらわず再申請する(いつでも・何度でも可)。次回は調査時の伝え方も準備を
- 厚生労働省「要介護認定の仕組みと手順」→ https://www.mhlw.go.jp/
- お住まいの市区町村の介護保険担当窓口・地域包括支援センター(総合事業・一般介護予防事業・高齢者サービスの内容の確認先)
- 各都道府県介護保険審査会(審査請求の窓口)