非該当・却下になる3つの理由
負担限度額認定(特養・老健・介護医療院・ショートステイの食費・居住費を軽減する制度)を申請して「非該当」「却下」の通知が届くと、月数万円の負担増を前に途方に暮れてしまいますよね。ただ、非該当=打つ手なし、ではありません。まず「なぜ非該当になったのか」を整理すると、次に取れる選択肢が見えてきます。
この記事は介護費用はいくら必要?月額・総額の目安と軽減制度の一部です。介護のお金を全体から把握したい方は、こちらにまとめています。
非該当になる理由は、大きく次の3つに分けられます。
- ① 本人または同じ世帯に住民税課税者がいる:本人が非課税でも、同居する子などが課税されていると「住民税課税世帯」となり、原則として対象外(第4段階)になります
- ② 世帯分離していても配偶者が住民税課税:配偶者は別世帯・別居でも課税状況が審査されます。法律上の婚姻関係が続いている限り対象です
- ③ 預貯金等が基準額を超えている:本人(と配偶者)の預貯金・有価証券などの合計が、所得段階ごとの基準額を超えていると対象外になります
非該当通知には理由が書かれていることが多いですが、記載が簡単で分かりにくい場合もあります。どの理由で非該当になったのかが分からないときは、市区町村の介護保険窓口に確認することから始めましょう。理由によって、この後の打ち手が変わってきます。
預貯金要件を確認する(段階別の資産基準の目安)
非該当理由として意外と多いのが、③の預貯金要件です。2021年8月の制度改定で、所得段階ごとに基準額が細かく設定されました。以下は目安の一覧です(原則の基準額。最新の運用はお住まいの市区町村にご確認ください)。
| 利用者負担段階 | 主な対象者 | 資産基準の目安(単身) | 資産基準の目安(夫婦) |
|---|---|---|---|
| 第1段階 | 生活保護受給者・老齢福祉年金受給者 | 1,000万円以下 | 2,000万円以下 |
| 第2段階 | 非課税世帯で年金収入等80万円以下 | 650万円以下 | 1,650万円以下 |
| 第3段階① | 非課税世帯で年金収入等80万円超〜120万円以下 | 550万円以下 | 1,550万円以下 |
| 第3段階② | 非課税世帯で年金収入等120万円超 | 500万円以下 | 1,500万円以下 |
| 第4段階(対象外) | 住民税課税世帯・配偶者が課税・または預貯金等が基準額超過 | ||
※2021年8月改定以降の原則の基準額です。制度改正により変わる可能性があるため、最新の金額は市区町村の介護保険窓口でご確認ください。
「預貯金等」に含まれる資産・含まれない資産
- 含まれるもの(目安):預貯金(普通・定期)、現金(タンス預金含む)、有価証券(株式・国債など)、投資信託、金・銀などの貴金属 など
- 含まれないもの(目安):自宅などの不動産、生命保険(自治体により扱いが異なる場合あり)、自動車、腕時計・宝石などの日常生活品
非該当でも使える5つの軽減策
ここからがこの記事の本題です。負担限度額認定が非該当でも、条件次第で使える可能性のある軽減策が5つあります。すべてに当てはまる必要はなく、「うちはどれが使えそうか」という視点で読み進めてください。
① 高額介護サービス費(課税世帯でも月の上限あり)
高額介護サービス費は、介護サービス費の自己負担(1〜3割分)が月の上限額を超えた場合、超えた分が払い戻される制度です。負担限度額認定と違い、課税世帯にも所得区分ごとの上限額が設定されています(一般的な課税世帯で月44,400円が目安)。食費・居住費は対象外ですが、介護サービス費の部分は確実に頭打ちにできます。多くの自治体では初回に申請すれば以降は自動的に振り込まれます。詳しくは 高額介護サービス費制度の解説記事 をご覧ください。
② 特例減額措置(課税世帯でも食費・居住費が減額される可能性)
「課税世帯だから食費・居住費の軽減は一切ない」と思われがちですが、実は例外があります。それが特例減額措置です。本来対象外の第4段階(課税世帯)でも、夫婦の一方が施設に入所した結果、在宅に残る配偶者などの生計が困難になる場合に、食費・居住費が第3段階相当まで減額される可能性があります。
収入・預貯金の具体的な基準額は自治体の案内で確認が必要です。要件が細かいため、「配偶者が在宅に残り、施設費用を払うと生活が苦しくなる」状況に当てはまりそうなら、まず市区町村の介護保険窓口に相談してみてください。申請窓口も市区町村です。あまり知られていない制度のため、窓口で「特例減額措置について相談したい」と具体的に伝えるとスムーズです。
夫が特養に入ることになって負担限度額認定を申請したら、夫の年金で住民税が課税されていて非該当でした。施設の費用を払うと私の生活費がほとんど残らない計算で、本当に不安で。施設の相談員さんが「特例減額措置というものがあります」と教えてくれて、市役所に相談したら要件に当てはまり、食費と居住費が減額されました。こんな制度、自分では絶対に見つけられなかったと思います。困っていることを正直に相談して良かったです。
※実在の方の体験談ではありません。よくある状況をもとに編集部が構成した例です。
③ 社会福祉法人等利用者負担軽減制度
社会福祉法人が運営する特養やショートステイなどでは、低所得で生計が特に困難な方の利用者負担(介護費の自己負担・食費・居住費など)が原則4分の1軽減される制度があります。対象要件は「住民税非課税世帯」「年間収入・預貯金が一定額以下」「資産を活用しても生活が困難」などで、市区町村が対象者を認定します。
- 実施しているのはこの制度に参加している社会福祉法人・自治体のみです。すべての施設で使えるわけではありません
- 負担限度額認定とは要件が異なるため、負担限度額認定が非該当でも対象になる場合・ならない場合があります
- 利用中の施設(または入所予定の施設)が実施法人かどうかは、施設の相談員か市区町村窓口に確認しましょう
④ 高額医療・高額介護合算療養費(年単位でさらに払い戻し)
医療と介護の両方を使っている世帯なら、年間(毎年8月〜翌年7月)の医療費と介護費の自己負担合計が基準額を超えた場合に、超えた分が払い戻される制度があります。高額介護サービス費を使った上で、それでも残った自己負担が年単位で見ると大きい場合の「最後のセーフティネット」です。課税世帯にも所得区分ごとの基準額があります。詳しくは 高額医療・高額介護合算療養費制度の解説記事 をご覧ください。
⑤ 費用を抑える施設・部屋タイプへの選び直し
制度での軽減が難しい場合、費用構造そのものを変えるという選択肢もあります。
- 多床室を選ぶ:特養のユニット型個室と多床室では、居住費だけで月数万円変わることがあります。同じ施設内での部屋変更や、多床室のある施設への申し込み先変更を検討する価値があります
- 老健を経由する:老健は在宅復帰を目指す施設のため終身利用はできませんが、月額費用が特養個室より抑えられる場合があります
- 地域差を活用する:施設の費用は地域によって差があります。近隣の市区町村まで範囲を広げると選択肢が増えることがあります
費用の内訳や施設ごとの相場感は 特養の費用の解説記事 と 老人ホームの費用が払えない時の対処法 で詳しく解説しています。
軽減制度を使っても残る負担、
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負担限度額認定が使えなくても、費用を抑える道筋は一つではありません。制度・施設選び・世帯の見直しをあわせて検討すると、負担を下げられる余地が見つかることがあります。
世帯分離で該当になる場合・ならない場合
「世帯分離すれば非課税世帯になって該当するのでは?」と考える方は多いです。たしかに、同居する子などの課税が理由(理由①)で非該当だった場合、世帯分離によって本人の世帯が住民税非課税になれば、該当し得ます。ただし、期待通りにいかないケースも少なくありません。
- 本人は住民税非課税だが、同居の子が課税されているため「課税世帯」になっていた
- 配偶者がいない(死別・離別)、または配偶者も住民税非課税
- 本人(と配偶者)の預貯金等が基準額以下
- 配偶者が住民税課税:配偶者は世帯を分けても別居でも課税状況を見られるため、対象外のまま
- 本人自身が住民税課税(本人の年金収入等が多い場合)
- 預貯金等が基準額を超えている(世帯分離では解消しない)
再申請のタイミング
負担限度額認定は、一度非該当になっても、状況が変われば何度でも申請できます。「もう無理」と諦めてしまうのが一番もったいないパターンです。再申請を検討すべきタイミングは次のとおりです。
- 預貯金等が基準額を下回ったとき:施設費用や生活費の支払いで資産が減り、基準額以下になったらすぐ申請を検討。ぎりぎりで非該当だった方は、数か月〜1年後に該当する可能性があります
- 世帯・家族の状況が変わったとき:配偶者が亡くなった、課税だった配偶者や世帯員が非課税になった(退職・収入減など)、世帯分離をした など
- 毎年8月の更新時期:所得段階は前年の所得で毎年見直されます。前年に収入が減っていれば、8月からの新しい判定で該当する可能性があります
母の申請をしたとき、預貯金が基準を60万円ほど超えていて非該当でした。その時は「うちはダメなんだ」と思い込んでしまって。でも施設費用の支払いで預貯金は毎月減っていくわけで、ケアマネさんに「基準を下回ったら再申請できますよ」と言われてハッとしました。1年後に通帳を確認して再申請したら該当になり、食費・居住費が下がりました。遡って戻らないと聞いていたので、通帳は数か月ごとに確認するようにしていました。
※実在の方の体験談ではありません。よくある状況をもとに編集部が構成した例です。
まとめ:非該当でも「打つ手なし」ではありません
- まず非該当の理由(課税世帯・配偶者課税・預貯金超過)を市区町村窓口で確認する
- 課税世帯でも高額介護サービス費で介護サービス費には月の上限がある
- 在宅に残る配偶者の生計が苦しくなるなら特例減額措置を相談する
- 社会福祉法人軽減・合算療養費・多床室や老健への選び直しも選択肢に入れる
- 預貯金の減少・世帯状況の変化・毎年8月の見直しで何度でも再申請できる。適用は申請月からのため早めに動く
- 厚生労働省「介護保険制度」関連ページ(補足給付・負担限度額認定)→ https://www.mhlw.go.jp/
- 介護保険法 第51条の3(特定入所者介護サービス費の支給)
- 厚生労働省「令和3年介護保険制度改正における負担限度額認定の見直し」
- お住まいの市区町村の介護保険窓口(特例減額措置・社会福祉法人等利用者負担軽減制度の実施状況・基準額)